新東名高速道路の御殿場ジャンクション(JCT)から三ケ日JCT間が2012年4月14日に開通した。大断面トンネルや高橋脚の橋梁が多く、難条件を迫られたなか、工期短縮と工費削減のための技術を総動員した。

(写真:中日本高速道路会社)
(写真:中日本高速道路会社)


 20年以上の歳月をかけた一大プロジェクトだ。御殿場JCT―三ケ日JCT間の基本計画が策定されたのが、1989年。都市計画決定や国土交通大臣からの施行命令を受け、95年に着工した。今回の開通区間の事業費は2兆5710億円に達する。

 特徴は、本線が全区間3車線であることに加え、太平洋沿岸の市街地を避けて北側の山間部にルートを設定したために構造物の比率が高いことだ。トンネルが26%、橋梁が32%で合計58%を占める。既存の東名高速道路(現東名)の御殿場JCT―三ケ日JCT間では構造物比率が20%なので、その3倍近くに上る。土工区間についても、大断面の切り土や高盛り土区間が多く、全区間にわたって技術的難易度が高い。

 現東名とのもう一つの違いが線形だ。カーブの最小半径は、現東名が300mなのに対して新東名は10倍の3000m、勾配は5%に対して2%で、設計速度は時速120kmだ。

 現東名とのダブルネットワーク化で渋滞が減少し、移動時間も短縮できる。新東名と現東名は御殿場JCTと三ケ日JCTでそれぞれ接続するほか、静岡市内にも両者を結ぶ連絡路がある。走行車両は、どちらを走るか選択することができる。

【トンネル】断面を平たくして掘削量低減

 従来の2車線トンネルの掘削断面は約80m2。同じ断面形状のまま3車線用に拡大すれば、断面積は200m2を超えてしまう。中日本高速道路会社では、必要な道路幅員やトンネルの安定性を確保できる範囲で経済的な形状を検討。従来のトンネルに比べて扁平な形状を採用した。

 標準的な2車線トンネルの縦横比が0.65~0.75なのに対して新東名は0.55。幅を広げる一方で高さは抑えて、断面の大幅な拡大を防いだ。それでも、掘削断面は約180m2、内空断面は150m2と従来の2車線トンネルの2倍以上だ。

(資料:中日本高速道路会社)
(資料:中日本高速道路会社)

小口径のTBMで先行掘削

 大断面に対応するため、延長1000m以上の17トンネルで、TBM(トンネル・ボーリング・マシン)導坑先進拡幅掘削工法を採用した。

 まず、TBMで直径5mの導坑を掘り、次に上半、下半、インバートの順で拡幅掘削した。小断面のTBMを先行させることで、亀裂や湧水など地山の状態を確認。拡幅掘削での支保工の設計や補助工法などの適切な選定が可能になった。

 導坑は水抜き坑としての役割も果たす。そのため、切り羽の安定につながる。「特に地すべり地帯などでは、事前に対策を講じることができ、効率的で経済的な拡幅掘削が可能になった」。中日本高速東京支社建設事業部建設チームの福永幸正チームリーダーは、こんなふうに話している。

 TBMの導坑の補強には、ロックボルトの4倍の伸び強度がある直径15.2mmのPC鋼より線のケーブルボルトを採用。事前補強の効果で拡幅掘削の安全性も高めた。

高強度の支保材で大型化を防ぐ

 一般に掘削断面が大きくなれば、吹き付けコンクリートの厚みが増し、ロックボルトは長くなり、本数も増える。そこで、これらの強度を高めて支保工の大型化を防いだ。

 吹き付けコンクリートの強度は従来の2倍の36N/mm2。厚さを200mmから150mmへと薄くして掘削断面を縮小した。覆工コンクリートも強度を高め、2車線トンネルと同じ厚さの400mmにとどめた。

 ロックボルトには従来の1.7倍の強度がある170kN/mm2または290kN/mm2を採用した。鋼アーチ支保工も1.5倍の590kN/mm2の高強度鋼を使って大型化を抑えている。