昨年12月の中央自動車道・笹子トンネルの事故以来、インフラ維持管理の重要性が社会に広く認知されました。国も自治体も、構造物の点検や補修に多くの予算を確保し、取り組みを始めています。

 しかし、点検や補修は必ずしも容易ではありません。例えば事故が起こった笹子トンネルでは、天井板からトンネル頂部までの高さが5m以上あり、足場がないとアンカーボルトを間近で点検できない構造でした。こうした維持管理のしにくさが、事故に結び付いた可能性も考えられます。

 そもそも設計の時点で、維持管理のしやすさを考慮しておくべきではないのか――。日経コンストラクション7月8日号では、特集「維持管理しやすい設計」を企画しました。


日経コンストラクション2013年7月8日号特集「維持管理しやすい設計」から
日経コンストラクション2013年7月8日号特集「維持管理しやすい設計」から

 こうした考え方をいち早く取り入れ始めたのが道路橋です。2012年に示方書が改訂され、「維持管理の確実性および容易さ」を考慮するように求めています。本誌は道路橋の最新動向を取材し、維持管理を重視した設計の在り方を探りました。

 特集記事では、大きく三つのトピックスを取り上げています。一つは、経済性に優れるものの、補修の難しさが懸念された「少数鈑桁橋」。もう一つが、点検に手間のかかる支承を損傷しにくくする工夫や、支承そのものを省略する構造形式。そして三つ目が、経済性と維持管理性をてんびんにかけつつ、新しいアプローチでの設計を試みた宮城県・大島架橋の事例です。いずれも、「維持管理しやすい設計とは何か」を考える絶好のヒントになると思います。

 特集記事では、取り組みが先行している道路橋を対象として取り上げましたが、根本的な思想はほかの構造物でも同様です。また、単に設計者だけが気を付ければ良いという話ではありません。維持管理しやすいインフラは、発注者が設計思想を施工者に確実に伝え、施工者がそれを踏まえて施工することで初めて完成します。インフラの整備に携わる全ての技術者に、ぜひお読みいただきたい特集です。