建設産業ではかなり前から、「イメージアップ」が課題だと言われています。国土交通省や建設関連の団体、企業が主体となって、現場見学会や各種イベント、学生への情報提供などを行ってきました。一定の効果はあったと思われますが、入職者の増加にはなかなか結び付いていないのが現状です。

 国土交通省は昨年11月に、「建設産業の魅力を発信するための戦略的広報検討会」を立ち上げ、この3月にアクションプランをまとめました。日経コンストラクションでも建設産業の広報について考えてみようと、5月13日号で特集「人を引きつける広報」を企画しました。


日経コンストラクション2013年5月13日号特集「人を引きつける広報」から
日経コンストラクション2013年5月13日号特集「人を引きつける広報」から

 「マスコミは、建設産業の魅力についてももっと伝えてほしい」といった意見をよく耳にします。防災や災害対応に貢献していること、社会資本整備によって人々の生活を豊かにしていること、やりがいあふれる仕事であること――。こうしたプラスの面が報じられず、マイナス面ばかりが前面に出てしまうのを歯がゆく思っている人は多いでしょう。

 一方で、建設産業から社会へのアピール不足も多くの人が感じているようです。特集記事に掲載した本誌読者を対象としたアンケート調査でも、建設産業の広報活動が不十分だと答えた人が6割に上ります。

 では、どのような情報発信をすれば、受け手の心に響くのでしょうか。

 特集記事では、国交省の上記の検討会でオブザーバーを務めたNHKエンタープライズの平原由三枝経営企画室業務主幹のインタビューを掲載しました。平原氏はこう述べています。「一般社会でのイメージの悪さを改善したいのなら、何がイメージを悪くしているのか検証することから始めるべきだ。『PR不足だからイメージが悪い』と決めつけるのは解決につながらない」。

 非常に示唆に富む発言だと思います。単に、魅力を伝えきれていないから魅力を伝えよう、というだけでは、効果が上がるのか疑問です。自分たちで良い面ばかりをアピールしても、受け手にとってはどこか「嘘臭く」感じられないでしょうか。

 特集記事で取り上げた大手建設会社の例では、学生に対して、仕事のやりがいだけではなく、例えば勤務時間が不規則で長いといった「つらさ」についても伝えているそうです。建設業の負のイメージは「つらさ」だけではありませんが、マイナス面を正直にさらけ出すことも、建設産業の本当の姿を知ってもらう取り組みの第一歩だと言えるでしょう。

 特集記事では、広報活動に関して、「建設産業の将来像を示す」ことの重要性に言及しています。これも同様で、明るい未来を描けばいいというものではありません。悪いところは悪いと認め、それを将来に向けてどう改善していくのかについても説明していくべきではないでしょうか。ただしこうなると、広報をどうするというレベルではなく、業界構造の改善とセットで考えることが必要になります。