昨年12月の中央自動車道・笹子トンネルの天井板崩落の後も、インフラの老朽化に起因するとみられる事故が相次いでいます。今年1月には国道371号の紀見トンネル(大阪府河内長野市~和歌山県橋本市)で側壁コンクリートが剥落。2月には、浜松市の歩行者専用吊り橋である第一弁天橋で、部材の一部が破断して橋が傾くという事故が発生しました。

 どちらの事故も、過去に点検を実施していた構造物で起こった点が特筆されます。点検で不具合を見落としていたのか、点検後に不具合が生じたのかは分かりませんが、前者だとすれば点検のやり方や精度に課題がある可能性があり、後者であれば点検間隔の見直しが必要になるかもしれません。

 点検の重要性がにわかにクローズアップされている昨今ですが、まだ多くの課題をはらんでいるわけです。日経コンストラクション3月25日号の特集「『点検革新』への道筋」では、点検にまつわる課題を抽出し、今後の点検を実効性のあるものにするための道筋を探りました。


日経コンストラクション2013年3月25日号特集「『点検革新』への道筋」から
日経コンストラクション2013年3月25日号特集「『点検革新』への道筋」から

 特集記事に合わせて、全国の都道府県と政令市に緊急アンケート調査を実施しました。点検についての課題を挙げてもらったところ、「予算不足」「職員の人数や専門性が足りない」「古い構造物の図面がそろっていない」など、仕組みや体制の面での課題が多くの自治体から寄せられました。

 他方、点検の手法そのものにも課題がありそうです。国土交通省のトンネルの点検要領では、目視や打音検査が中心的な手法として位置づけられています。しかし、人の目や耳に頼る方法では点検者によってばらつきが生じやすいうえ、結果が「アナログ」であるがゆえに、定量的な評価が難しい、経年変化を確認しにくいといった課題があります。そもそも、人手に頼るこれらの手法では、今後、大量の構造物を点検する人材の確保も困難になります。

 2012年度補正予算に盛り込まれた「防災・安全交付金」で、老朽化したインフラの総点検が始まります。それを効果的なものにするためにも、予算措置だけでなく、点検にまつわるこのような課題を解消していくことが求められます。特集記事では、課題の解消に向けて「七つの提言」を示しました。特集記事をお読みいただき、今後の点検に役立てていただければ幸いです。