昨年12月に発生した中央自動車道・笹子トンネルの天井板崩落事故。国土交通省の「トンネル天井板の落下事故に関する調査・検討委員会」(委員長:今田徹・東京都立大学名誉教授)では、天井板を留めていたアンカーの引き抜き試験などを実施していますが、現時点で結果は公表されていません。

 事故原因は特定されていない状況ですが、日経コンストラクションは1月28日号で特集「笹子の衝撃、七つの教訓」を企画し、本誌なりに事故についての検証を試みました。


日経コンストラクション2013年1月28日号特集「笹子の衝撃、七つの教訓」から
日経コンストラクション2013年1月28日号特集「笹子の衝撃、七つの教訓」から

 例えば、天井板の当初耐力は十分だったのか。過去の文献や図面、国交省の資料や技術指針をもとに、当初の設計思想を明らかにし、天井板定着部のアンカーの応力計算を再現してみました。中日本高速道路会社によれば、笹子トンネル上り線の天井部の設計資料が見つかっていないので、同時期に設計された恵那山トンネルの設計思想なども参考にしています。検証の結果については、ぜひ本誌をご覧ください。

 特集記事では、これまでに明らかになった情報と識者への取材をもとに、事故から見えた七つの教訓を提示しています。「『落下』への危機意識を高める」、「落ちても被害を出さない設計を」など、一つひとつは目新しい内容ではありません。本誌のコラム「事故に学ぶ」にも共通しますが、事故から得られる教訓とは、「当たり前と思って見過ごしていた物事を改めて意識すること」なのかもしれません。

 今後、アンカーの引き抜き試験などの結果が出れば、原因がある程度、特定されることになるでしょう。その結果をどう生かしていくのか。インフラの老朽化対策、維持管理の在り方、非構造部材の設計法――。様々な分野に影響が及ぶことが考えられます。日経コンストラクションでは、そうした話題をつぶさに追っていきたいと考えています。