建設現場を取材していると、「やり手」というか、個性の強い現場所長に巡り会うことがあります。特に、その建設会社の「看板現場」である場合、こうした傾向が強いようです。

 しかし、個性の強い現場所長も、単に個性だけで現場の職員や協力会社を引っ張っているわけではなく、個性を軸にチームをうまくまとめていることが多いように感じます。1人のスタープレーヤーだけでは現場がうまく回らないということは、現場に限らず組織の中で仕事をしている人にとっては当たり前かもしれません。

 日経コンストラクション12月10日号では「現場を回すチームの力」と題した特集を組み、「チーム力」や「チームワーク」に焦点を当てました。「チーム」というのはいまひとつとらえどころがなく、大事なことだと分かっていても、これまでは正面切って取り上げたことがなかったテーマです。

 特集記事では、いくつかの現場や会社を取り上げてケーススタディーしました。特に中小規模の建設会社の場合は、単独の現場というより、会社全体をチームとして機能させることが成功の鍵になるようです。

 例えば小田島組(岩手県北上市)では、小田島直樹社長が中心となって、社員の価値観を共有する仕組みを設けています。発注者を「お客様」ととらえ、お客様からの評価を高めるために、現場でのマナーやクレーム対応など、様々なテーマで社員教育を実施しています。磯部組(高知県奈半利町)では、CCPM(クリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメント)と呼ぶ管理手法を全社的に取り入れています。この手法の肝になる施工計画の立案に当たっては、他現場の担当者などにも参加を促し、チームとして機能する体制を構築しています。

 これらの会社では、チームをうまく機能させることで、工事成績評定点や利益率の向上に結び付けています。チーム力が会社の業績を左右するというわけです。

 現場に配属される人数が減ったり、現場内でのジェネレーションギャップが大きかったりする昨今、現場の一体感は失われがちです。だからこそ、チームの力というものに目を向ける必要があるのではないでしょうか。