10月1日、東京駅の赤レンガの駅舎が保存・復元工事を終え、リニューアルオープンしました。大正時代の開業当時を再現した華やかな外観が注目を集めていますが、その地下では、復元を支えるための地道な工事が積み重ねられていました。

 巨大ターミナル駅である東京駅は、一日たりとも休むことができません。工事で扱う対象が重要文化財であるという点だけではなく、「駅を使いながら」という難しい条件で工事を進めることが求められました。


日経コンストラクション2012年10月8日号特集「使いながら大改造」から
日経コンストラクション2012年10月8日号特集「使いながら大改造」から

 このように、既設の構造物を生かしながら、新たな機能を加えたり補強したりする事例が増えています。日経コンストラクション10月8日号の特集「使いながら大改造」では、東京駅の工事のほか、成田国際空港の誘導路下にあるトンネルの補強工事、JR総武線の高架橋の地下に東京外かく環状道路のトンネルを新設する工事など、五つの事例を取り上げました。いずれも、既設の構造物に影響を与えずに、近接するほかの構造物との取り合いや施工時間の制約をクリアしながら進める工事です。構造物の設計や施工計画の立案・実現には、土木技術者の発想力と実現力が大いに試されます。

 施工条件は現場によって異なるので、取り上げた事例で採用した方法がそのまま別の現場で使えるとは限りません。しかし、難条件を克服して施工を実現するためのヒントになるのではないでしょうか。また、こうした場面での発想力と実現力こそが、土木技術の進歩の源泉だと確信しています。