土木界で若手の育成や技術の伝承が問題にされ始めて、相当な歳月がたったように思います。しかし残念ながら、その悩みは解消されるどころか、手詰まり感さえ漂っています。これらの問題を論じるときには、得てして教えられる側の資質が問題にされ、「最近の若者は…」と決まり文句で語られがちですが、それでは問題は解決しませんでした。

 本来は、教える側と教えられる側との関係がうまくいかなければ育成や伝承の効果は高まらないはず。教えられる側でなく、教える側の問題をきちんと考えなければならないのではないかーー。日経コンストラクション9月24日号の特集「さらば『評論家上司』」はそんな問題意識から企画しました。

日経コンストラクション2012年9月24日号特集「さらば『評論家上司』」から
日経コンストラクション2012年9月24日号特集「さらば『評論家上司』」から

 表題の「評論家上司」とは、問題を分析したりするけれども行動が伴わない上司のことです。日常の仕事を通じて人材を育成するという方法が、うまく機能しなくなってきたことは多くの先輩や上司が感じているところです。ではどうするか、どう行動するかが問われています。

 日経コンストラクションで人気の読者投稿欄「ねっとわーく」では、若手育成や技術伝承がたびたび議題に上ります。最近は、人材育成に苦慮するなかで自分の問題として解決の糸口を見いだそうとする姿勢も見られるようになってきました。苦闘する先輩や上司のヒントになるような情報を提供したいという思いも、特集に込めました。

 現代の先輩や上司が気の毒なのは、しっかりと考えられた育成プランに基づいて自分自身が育ったわけではないことです。実務の現場に放り込まれて多くの先輩や同僚にもまれながら育ったために、教えるノウハウが養われていない可能性があります。教え方を自ら考えなければなりません。

 特集では、若手育成や技術伝承という難題に挑む上司や組織を取り上げました。私自身も上司の端くれとして、考えさせられた企画でした(読者に伝えるはずのものが、すべて自分に跳ね返ってくる…)。ぜひご一読ください。