土木の市場が急激にしぼんだこの10年に、土木の業績を伸ばした会社があるとはーー。日経コンストラクション7月23日号の特集「10年で伸びた会社」は、担当記者のそんな素朴な驚きから企画が動き出しました。

 21世紀に入ってからの約10年間で、土木投資は約4割も減りました。土木投資の大半を占める政府投資も、同じく4割ほど減っています。ピークの1995年度に比べれば、それぞれ半減しています。

 特集では、2001~2010年度の10年間に土木の売上高を伸ばした会社を調べることから始めました。土木氷河期とも言える時期だけに、ずっと右肩上がりで伸びていなくても大したものだし、売上規模を維持しているだけでも建設業界での序列は確実に上がっているはずなので、そうした会社などを取り上げて活力の源を探ることにしました。

 建設会社でスポットを当てたのは、土木では後発組でありながらすっかり「大手4社」に定着した清水建設。ランクアップが目覚しい鉄道系建設会社の代表格、東鉄工業。得意技術で業績を伸ばす地方の建設会社、加藤建設(愛知県蟹江町)……。

 建設コンサルタント会社では、10年間で売上高を7割増やしたオリエンタルコンサルタンツ。維持・補修時代を先取りしてランクアップした川崎地質(東京都港区)。衛星、民間、海外の新規事業が成長をけん引するパスコ……。

 各社におおむね共通するのは、得意技術に磨きをかけて事業領域を拡張したり、維持・補修などの有望市場や民間市場を開拓したりしていることです。「10年で伸びた会社」といっても、数年前に業績を急に伸ばしてそうなった会社はまれで、10年ほど前、あるいはその前から注力した仕事が少しずつ実を結んだという会社が目に付きます。先を読む力や事業開拓を継続させる粘り強さのたまものとも言えるでしょう。

 一例を挙げると、10年間で単体土木売上高を3割増やした加藤建設は、「パワーブレンダー工法」と呼ぶ地盤改良工法の売り上げが4割ほど増えたのが大きく貢献しています。地域の有力建設会社として受注に困ることのなかった時代に、同工法を武器に全国へ事業領域を広げようとしたことが、現在の勢力につながりました。

 東日本大震災の復旧・復興需要で一時的に市場が拡大しても、中長期的な拡大は見込めない厳しい時代です。共存共栄というわけにはいきませんが、縮小したといっても一定規模の市場はあるわけですから、やりようによっては会社の業績を伸ばすことができるわけです。10年後を見据えて、維持・補修などの有望市場や再生可能エネルギーなどの成長市場の開拓に挑むのか、それとも縮小均衡で生き残りを図るのか。日常の一つひとつの仕事のなかに10年後の勢力を左右する要素が潜んでいます。