無人化施工が再び脚光を浴びています。東京電力福島第一原子力発電所の事故対応をはじめとして、2011年に紀伊半島を襲った台風12号の豪雨による河道閉塞の対策などで欠かせない技術となっています。日経コンストラクション6月25日号の特集は「無人化施工、再起動」と題して、人を寄せつけない過酷な現場での働きぶりをリポートするとともに、さらなる効率化に向けた技術開発の動向を探りました。

日経コンストラクション2012年6月25日号特集「無人化施工、再起動」から
日経コンストラクション2012年6月25日号特集「無人化施工、再起動」から

 これまで無人化施工の普及を妨げていたのは、一説には有人作業の6割程度とされる施工効率の低さにあります。ところが、放射性物質に汚染された福島第一原発の原子炉建屋周辺では、現実問題として無人化施工でなければがれきの撤去もままなりません。同様に有人作業では安全を確保できない崩壊斜面の不安定土塊の撤去などでも、無人化施工が頼みの綱となります。

 雲仙普賢岳(長崎県)の噴火災害対策を機に、無人化施工の技術開発が本格化してから約20年。この間、有珠山(北海道)や三宅島雄山(東京都)の噴火災害対策、新潟県中越地震や岩手・宮城内陸地震の土砂災害対策などに導入され、技術をつないできました。それが昨年来の有事に生きた格好です。

 わが国の土木技術の高さは、旺盛な国内投資に支えられてきました。今後、国内の土木市場の縮小が余儀なくされ、仕事の中身も新設から維持・補修へと変容するなかで、必要になる技術をいかに継承、発展させていくかは大きな課題です。無人化施工の現状と課題を整理してみて、改めてその重要性を痛感させられました。

 日経コンストラクションが創刊した1989年ごろは、ビッグプロジェクトが花盛りでした。世界最大の支間長を誇る明石海峡大橋は、若戸大橋や関門橋などから大鳴門橋や瀬戸大橋などを経て連綿と発展させてきた技術のたまものだと、よく聞かされたものです。技術を継承、発展させるには、土木の将来を見据えた明確な目標設定が必要ではないでしょうか。全ての技術を継承、発展させるのは無理があるだけに、重要な技術に狙いを定めることも必要になります。成熟した国内市場に向けて、あるいは旺盛な投資が予想される新興国の市場に向けて、どのようなシナリオを描いていくかが問われていると思います。