インフラの整備や運営・管理に、民間の力を生かす新たな手法が登場しています。これまで官公庁が担ってきた仕事を民間に委ねたり、民間に個別に発注していたいくつかの仕事を一括発注することで民間の力を引き出したりする取り組みです。

 「官から民へ」の流れも民間活用も以前からのものですが、最近の言葉でいえばPPP(官民連携)ということになります。PFI(民間資金を活用した社会資本整備)や発注者支援などを含む概念です。

 日経コンストラクション6月11日号の特集「拡大するインフラPPP」では、土木にまつわるPPPに焦点を当てて最新動向を紹介しています。シリーズ企画「成長分野で強くなる」の一環です。

日経コンストラクション2012年6月11日号特集「拡大するインフラPPP」から
日経コンストラクション2012年6月11日号特集「拡大するインフラPPP」から

 民間活用の新手法として代表的なものの一つが、2011年11月に施行された改正PFI法で新たに導入されたコンセッション方式。国や自治体などが施設所有権を持ったまま、公共施設の運営を民間事業者に委託するやり方です。特集記事では、先行する空港や下水道を中心に最前線の動きを追っています。

 国土交通省は、この7月に関西国際空港と大阪国際(伊丹)空港の経営を統合し、2014年度をめどに両空港の運営権を民間に売却する計画を立てています。国が管理する全27空港についても、コンセッションを設定可能にする民活空港運営法案を今国会に提出しました。改正PFI法でコンセッションが認められていない道路分野でも、新たな動きが出てきました。愛知県が構造改革特区を活用し、有料道路の運営権を民間事業者に売却することを検討しています。

 PPPのフィールドが広がるのは公共施設の運営だけではありません。東日本大震災からの震災復興では、公共事業を発注する前段階の業務を民間企業に委ねる「事業促進PPP」が動き出します。この5月に、事業促進PPPとして三陸沿岸道路の事業監理業務の委託先10者が決まりました。このほか、地域維持型JVへの発注や「性能管理型」の維持管理付き舗装工事の発注といった包括発注が始まっています。詳しくは特集記事をお読みください。

 PPPは、これまでの仕事の延長線上で対応可能なものから、利害や権限などを調整して新しい枠組みを構築する必要があるものまで幅があります。ひとくくりで論じるのはそもそも無理があるのですが、あえて言えば、PPPなどの新しいフィールドにチャレンジしていかなければ建設産業に未来はないでしょう。インフラの整備や運営・管理を持続可能なものとし、良好なインフラを次代に引き継ぐためにも、旧来の仕組みにとらわれない民間活用が必要です。最初はうまくいかない場面も多いかもしれませんが、それを乗り越えて新たな官民連携のスタイルを構築してほしいと思います。