首都直下地震に対する新たな想定の震度分布が発表され、東日本大震災を教訓に土木構造物の耐震補強などをさらに強化する動きが出てきています。日経コンストラクション5月28日号の特集は「首都圏防災最前線」と題し、首都直下地震対策の最前線の動きを追いました。

 「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」の研究成果として文部科学省がこの3月に発表した東京湾北部地震の想定震度分布図では、従来の想定よりも強い揺れが首都圏を襲うことが示されました。2005年に中央防災会議が発表した震度分布図と比較すると、従来はほとんど見られなかった震度7の地域が点在し、震度6強の領域が広がる結果となっています。

日経コンストラクション2012年5月28日号特集「首都圏防災最前線」から。背景の図は、首都圏で最大の被害が出るとされる東京湾北部地震の想定震度分布図
日経コンストラクション2012年5月28日号特集「首都圏防災最前線」から。背景の図は、首都圏で最大の被害が出るとされる東京湾北部地震の想定震度分布図

 文科省の震度分布の新想定に基づいて東京都が4月に発表した新たな被害想定では、死者数は9641人に上り、従来想定の1.7倍に増えました。東日本大震災も踏まえて防災対策の再点検が必要になっています。

 これまで対策の必要がないと考えられていた土木構造物を耐震補強する動きが出てきました。東京地下鉄や東京都交通局は、国の基準を満たしていて耐震化は必要ないと判断していたラーメン高架橋柱や橋脚などを、補強の対象に加えることを決めました。東日本大震災で仙台市地下鉄は一部の柱の損傷が激しく、約50日間の運休を余儀なくされましたが、その状況を踏まえた耐震対策の強化です。首都圏では地震災害の深刻化を抑えるために、地震後の早期復旧や交通機能の維持を念頭にワンランク上の耐震化を図る動きが始まっています。

 特集では、構造物被害、液状化、火災、津波・浸水、緊急輸送路遮断のように被害の種類別に対策の最前線の動きを取材しました。ぜひご一読ください。