土木投資は21世紀に入って急激に減りました。国土交通省によれば、2011年度の土木投資の見通しは21兆9100億円で、10年前の01年度に比べて約8兆6000億円減少しています。その前の10年間と違って市場縮小の傾向は際立っており、たいへん厳しい10年間でした。受注競争の激化と相まって、技術力の低下や技術革新の停滞を心配する声をしばしば耳にするのも確かです。

 でもこの10年間も、技術革新は営々と進められてきました。バブル経済期のような華やかな技術革新は少ないですが、「日本一」「世界一」と呼べるような技術やプロジェクトが生み出されてきました。日経コンストラクション4月9日号の特集は「知られざる土木のNo.1」と題し、こうした技術に焦点を当てています。主要な建設会社や建設コンサルタント会社への調査によって、埋もれた「No.1技術」も掘り起こしました。詳しくは特集記事をお読みください。

 担当記者がつかんできた情報のうち、興味深かったものの一つが大林組の研究開発費の動向です。同社は過去5年間で研究開発費を50%増やし、さらに今後3年間で約10%上積みする方針です。たて坑なしで地上発進、地上到達が可能なシールド工法「URUP(ユーラップ)工法」、海水や海砂は使ってはならないというタブーに挑んだ「海水練り・海砂コンクリート」など、常識を覆す最近の同社の技術開発とも関連付けて考えたくなります。将来への投資として、いかに研究開発費を捻出するかもカギになります。

 土木界はやはり、技術革新があってこそ活性化し、若者にとっても魅力ある仕事になります。閉塞感を打ち破る突破口は、技術革新にこそあると考えます。最近10年間で連結売上高を倍増させ2兆円企業に成長したコマツの野路国夫社長も、前号(3月26日号)のインタビューで、技術革新の重要性を強調していました。

 今号では、「新東名の技術革新 総まくり」と題する特別リポートも掲載しています。4月14日に約160kmが新たに開通する新東名高速道路の技術革新を、文字通り「総まくり」しました。トンネル、橋梁、土工事、舗装、設備に分けて技術革新の軌跡をまとめています。こちらもぜひ、ご一読ください。