見えない場所に潜む不具合や劣化は、思わぬ災いにつながりがちです。発覚したときには大ごとになって、厄介な修復作業を余儀なくされます。

 日経コンストラクションは12月12日号から2号連続で、「隠れトラブルの災禍」と題する特集を企画しました。前編(12月12日号)では、PC(プレストレスト・コンクリート)の内部や設計ソフトに潜むトラブルの実態とその対策を探っています。

 ここ数年、PCケーブルの破断が続発しています。例えば、国道18号の妙高大橋(新潟県妙高市)では、箱桁下面の断面修復のためにコンクリートをはつったところ、9本のPCケーブルが破断しているのが見つかりました。グラウトの充填が不十分なシース管内に水が浸入したのが原因ですが、その対策に当たってほかのPCケーブルが健全かどうかを見極めるのも一筋縄ではいきませんでした。見えない場所にトラブルが隠れているからです。

 設計ソフトの操作に起因する設計ミスは、これまでもたびたび発生してきました。設計プロセスのブラックボックス化によるものです。建設コンサルタント各社は、2重、3重の照査を実施してミスを減らそうと努めていますが、残念ながら続発しています。

 設計ソフトにまつわるトラブル事例のうち最近発覚したものでは、チェックの「死角」が浮き彫りになりました。荷重のかかる方向を誤るといった前提条件の入力ミスや、図面に表さない座標値の入力ミスなどが設計者のチェックから漏れ、施工者に指摘されるまで明らかになりませんでした。工事がある程度進んでから設計ミスが判明した場合、設計者は設計費以上の修補工事費の負担を余儀なくされることもあり、経営上も重要な問題となっています。

 供給が需要を上回る成熟市場にあっては、成長市場以上に品質が厳しく問われます。工程やコストの制約が厳しいなかでも機能するように、品質確保の仕組みを見直す必要があります。足をすくわれがちな「隠れトラブル」への対処が欠かせません。

 連続特集の前編では、合わせて八つの「隠れトラブル」を取り上げました。後編(12月26日号)では、不具合やミスの隠蔽や改ざんを取り上げる予定です。