建設需要が急速にしぼむなかで、建設会社数の減り幅は緩やかな状況が続き、過当競争がじわじわと建設業を追い詰めています。一向に解消されない過剰供給構造のもとで建設業には疲弊感が募り、活力が失われつつあります。入札・契約制度を少し変えるだけでは、いかんともしがたい問題です。東日本大震災からの復旧・復興の本格化で一時的に建設需要が回復する見込みはありますが、財政上の問題を考えると中長期的な需要増は期待できません。このまま過剰供給構造が続けば、優れた会社もそうでない会社も共倒れといった事態に陥りかねません。放置できない問題です。
 
 日経コンストラクション11月14日号の特集は「建設業延命策の限界」と題して、不況下の緊急措置として始まった資金繰り支援などの保護策が行き詰まっている状況を描くとともに、格付けの見直しなどで「残す会社」を行政が絞り込み始めた動きを追いました。ぜひご一読ください。
 
 市場が縮小するなかで全ての会社が生き残ることができないのは自明です。対症療法的な救済措置では、かえって産業の疲弊を進行させます。一昔前なら“お上”が窮状を救うこともありましたが、現在の窮状は行政が何とかできる限度を超えているとみるべきでしょう。余剰会社の排除につながる格付けの見直しなどが始まっていますが、本来は民間企業の自律的な動きから業界再編が促されるべきです。企業の自立と、優れた企業が生き残る環境整備が急がれます。
 
 これまでの建設行政は、目標を最高レベルに設定して全体の質を引き上げようとするトップランナー方式ではなく、時間的な猶予を与えつつ全体の底上げを図ろうとする考え方が主流だったように思います。しかし、そのようなやり方は市場が拡大基調のときにこそ有効だったのかもしれません。国土交通省が保険未加入会社の排除に本腰を入れようとしている点から見ても、残るべき企業とそうでない企業の色分けがこれから進む可能性があります。行政側の危機感は高まりつつあります。民間企業にも覚悟が必要です。