東日本大震災からの復旧・復興がようやく本格的に動き出します。政府は、2011年度第3次補正予算に約9兆円の対策経費を盛り込むことを10月7日に閣議決定しました。12年度予算では各省庁が合計3.5兆円の対策経費を要求しています。国土交通省の11年度第3次補正予算には被災地の復旧・復興だけでなく、全国の防災対策の強化も盛り込まれていることから、被災地を中心に全国で対策事業が進められることになりそうです。
 
 一方、東日本大震災を教訓に土木構造物の技術基準などの見直しも進められています。日経コンストラクション10月24日号の特集「変わる技術基準、動き出す復興」では、これまでの見直し作業でどのような方針が打ち出され、何が決まり何が決まっていないかを独自取材で明らかにしました。前述の復旧・復興予算についても速報していますので、これまでに方向付けられた土木関係の新たな技術基準と復旧・復興予算の全容を知ることができます。技術基準などの見直しの動きは、海岸、港湾、河川、道路といった分野別にまとめました。ぜひご一読ください。
 
 技術上のポイントとなる津波対策では、海岸保全施設などの構造物を建設する際の「設計津波」の設定・明確化と「粘り強い構造」の実現が柱です。
 
 東日本大震災クラスの巨大津波に対しては、堤防などのハードだけで防ぐのでなく、避難を軸に総合的な対策を講じます。それよりも津波高さは低いものの発生頻度が高く、大きな被害をもたらす津波を「設計津波」と設定し、堤防などのハードによって内陸への浸入を防ぐ方針です。
 
 もう一つの柱である「粘り強い構造」については、設計津波を超える高さの津波に襲われても粘り強く持ちこたえる構造を目指しているのですが、基準化は難航しています。場合によっては、設計者に提案が求められることもありそうです。