東日本大震災は地震防災に新たな課題を突き付けました。津波対策だけでなく、耐震対策でも見直さざるを得ないものがあります。
 
 福島県須賀川市にある藤沼貯水池のアースフィルダムが地震で決壊したのを受けて、全国有数のため池の保有県である香川県は、耐震対策の見直しを迫られました。県内1万4619カ所のため池のうち、これまでに堤体の安定計算によって全面改修したのは約3.4%の504カ所にすぎないのです。
 
 香川県は当面、ハザードマップの作成に取り組みます。10万t以上の貯水量があるため池199カ所のハザードマップを今後3年間で作成するための助成事業を、6月の補正予算に盛り込みました。ただし、ハード面の対策は予算上の制約が大きく、容易に進みそうにないのが現実です。
 
 橋梁やボックスカルバートなどの構造物に取り付く部分の盛り土の被害は、過去の震災でも生じていましたが、今回の震災では改めてクローズアップされています。被災範囲が広域に及び、被害箇所数も多かったことから、各所で道路ネットワークが寸断され、初期対応に支障を来したからです。緊急時の重要度に応じた対策の検討が求められています。
 
 日経コンストラクション8月22日号の特集は「いまやるべき耐震対策」と題し、東日本大震災を踏まえた点検と補強の在り方を考えました。香川県のように対策の強化に乗り出した自治体の動きを追ったほか、工種別のチェックポイントをまとめています。
 
 東日本大震災は首都・東京の弱さも浮き彫りにしました。今号には、「東京震災、機能不全の危機」と題する特別リポートも掲載しています。東京が機能不全に陥らないために誰が何をすべきなのかを考えました。特集と併せてご一読ください。