災害に強いだけでは駄目です。東日本大震災からの復興は、人口減少や少子高齢化を見据えて、まちが再び活気付くようなものにしていく必要があります。

 東日本大震災は、ソフト対策を含め、人命を守る災害対策の重要性を改めて突き付けました。災害に強いまちづくりは復興の大前提です。でも、インフラだけが立派になって過疎化が進み、せっかく造ったインフラが次代の重荷になるようでは、復興の意味が問われます。経済の復興と生活の再建を両にらみで進めることが重要です。

 津波で被災した自治体はもともと、全国平均よりも人口減少が進むと予想されていました。国立社会保障・人口問題研究所が2006年12月に発表した「日本の将来推計人口」によれば、05年を基準とした35年の人口減少率は、全国平均が13%。これに対し、青森、岩手、宮城、福島の4県の津波被災市町村では人口減少率が25%に上り、岩手県内に限れば37%にもなります。

 おまけに、今回の震災では2万529人の死者・行方不明者を出しています(8月4日時点の警察庁緊急災害警備本部の集計値)。人口に占める死者・行方不明者の割合が最も高かった岩手県大槌町のそれは約10%。町外に避難している人が戻ってこなければ、さらに人口が減ることになります。人口減少を踏まえた復興が不可欠であるゆえんです。

 日経コンストラクション8月8日号の特集「次代につながる復興」は、そうした問題意識に基づき、実際にどのような復興を進めるべきかを考えました。ある程度の浸水は許容し、多重防御や土地利用の見直しによって人命を守る防災。居住地や都市機能を集約、再編するコンパクトなまちづくり。都市間の連携による都市機能の相互補完。そして、次代を担う若者の復興プロセスへの参画――。先行する被災自治体の復興の動きや識者の意見を交えて、あるべき復興の姿を探っています。

 こうした前例のない震災復興の実現には、相当の困難が予想されます。被災者の合意を得ながら進めることが前提になりますが、スピード感も求められます。政治の停滞で復興財源の手当てもおぼつかない状況にあります。後世の評価に耐えられる震災復興にするには、そうした困難を乗り越え、対応の遅れは懸命に挽回しなければなりません。それが、現代を生きる我々の務めだと思います。

 今号には、宮城県知事の村井嘉浩氏へのインタビュー記事も収録しました。復興に向けて過疎地版コンパクトシティーに挑み、漁港の集約と民間企業の参入促進で水産業を立て直すことに意欲を示しています。特集記事と併せてご一読ください。