東京の大都会の地下で、世界でも前例のないシールドトンネル工事が進んでいます。首都高速中央環状品川線の建設工事です。日経コンストラクション6月13日号の特別リポート「世界屈指のシールド」では、佳境を迎えつつあるシールドトンネル工事の技術の粋を余すところなく伝えています。

 直径10m以上の大断面トンネルを長さ8kmにわたって1台のシールド機で掘ることは、世界で初めて。品川線の本線トンネルは2本から成り、北行きトンネルを鹿島・熊谷組・五洋建設JVが、南行きトンネルを大成建設・大豊建設・銭高組JVがそれぞれ施工しています。両JVは掘進停止のトラブルに見舞われながらも、損傷しやすいシールド機前面のカッタービットへの対策をはじめとして、長距離掘進の課題の克服に挑んでいます。

 中央環状品川線大井地区トンネル工事では、たて坑を使わずにシールド機が地上から発進し、地上に到達する大林組のURUP(ユーラップ)工法が初めて導入されています。こちらも世界初の技術です。シールド機は5月20日に地上に姿を現し、掘進を終えました。

 並行する2本のシールドトンネルを非開削で接合する大橋ジャンクション付近の工事も要注目です。隣り合うトンネルのセグメントを切り開いて一つの大断面トンネルに拡張する工事は、ハザマの手で2012年の春ごろから実施されます。

 このように首都高速中央環状品川線は注目技術が目白押しです。今号ではこのほか、写真家の篠山紀信氏が東日本大震災を撮影した「現場紀信」に、大きくページを割きました。表紙の写真も氏の撮影によるものです。表紙の写真を見ていると、震災で何かを知ってしまったかのような兄妹の静かなまなざしに心を奪われます。でも、読者の方々が篠山氏の写真を見る前にあれこれと説明を加えすぎるのも野暮というものでしょう。「現場紀信」も特別リポートも、ぜひ日経コンストラクションを手にとってご覧いただければと思います。