東日本大震災の発生からちょうど1カ月を経た4月11日を節目として、被災地の復興に向けた動きが始まりました。政府は同日に東日本大震災復興構想会議の開催を閣議決定し、4月14日から議論を始めて6月末をめどに第一次提言を発表します。岩手県や宮城県も4月11日に復興の基本的な方針を打ち出しました。福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故の影響で厳しい対応を余儀なくされている福島県も同日に、復旧・復興に向けたプロジェクトチームを立ち上げました。

 日経コンストラクションはこれまで、東日本大震災の被害の実態や被災メカニズムなどの速報に力を入れてきましたが、これからは復旧や復興の動きも追跡していきます。その第一弾が5月23日号の特集「被災地再建の道筋」です。

 東日本大震災からの復興は、被災地のためになるものでなければ意味がありません。被災地だけの問題でもありません。日本の経済、社会、国土の造り直しにつなげなければ日本の明日がありません。どう復興するかは、被災地にとっても日本にとっても極めて重要な問題です。どのような復興計画が立案されても、その具体化に当たっては相当の困難を伴うでしょうが、それを乗り越えなければなりません。

 特集では、過去の震災復興の教訓に学ぼうと、1993年の北海道南西沖地震で甚大な津波被害を受けた北海道奥尻島の復興や1995年の阪神大震災からの兵庫県の復興を改めて取材し、震災復興の足取りや課題を整理しました。

 奥尻島の奥尻町青苗地区では、曲折を経て防潮堤の整備と高台への移転を軸とする復興を果たしましたが、人口の減少と高齢化によって町の活気が失われる事態に直面しています。兵庫県では、仮設住宅や恒久的な復興住宅への入居時に被災者のコミュニティーの分断を招き、高齢者の「閉じこもり」や「孤独死」が社会問題化しました。東日本大震災の被災地には高齢化率が高い三陸沿岸などがあり、これらの点だけでも復興が一筋縄ではいかないことが分かります。どう復興するかは、今後とも追いかけていかなければならない重要なテーマだと考えています。

 特集ではこのほか、懸命の応急復旧のリポートも収録しています。国土交通省東北地方整備局と地元の建設会社が協働して道路の「啓開」に当たり、わずか4日で15の救援ルートを開通させた「くしの歯作戦」。建設会社が多くの人員を送り込み、放射性物質に汚染されたがれきの処理や汚染水の流出抑止などに当たっている福島第一原発の事故対応。津波被害による大量のがれきの処理……。復旧や復興の段階における土木技術者や建設産業、官公庁の奮闘ぶりについては、今号限りとせずこれからも伝えていく所存です。