津波による落橋は、水の浮力で浮き上がった橋桁が水平方向の強い波で押し流されたものだった。地震の規模の割に構造物被害が少なかったのは、構造物に影響が少ない地震動の特性と耐震補強のためだった。藤沼貯水池(福島県須賀川市)のアースフィルダムが決壊したのは、堤体の締め固めが弱く遮水性が低かったためではないかーー。

 東日本大震災の発生からほぼ2カ月がたち、被災メカニズムの解明が進んでいます。日経コンストラクションでは、震災発生直後から継続的に被災地取材を実施しています。被災状況を調査した専門家の分析も拾い続けています。現段階ではまだ、現地調査による推測の域を出ないものもありますが、それらを含めてこれまでに明らかになった被災メカニズムの全容をまとめたのが、5月9日号の特集「解明される被災メカニズム」です。津波による落橋や積層ゴム支承の破断、アースフィルダムの決壊など、これまでにない被害も見られ、新たな課題が浮かび上がっています。

 冒頭の記述は、46ページを割いた特集記事のほんの一部です。特集の構成は、津波被災のメカニズム、構造物被災のメカニズム、地盤被災のメカニズムの三つに分かれています。項目数が多いので、ここでは各項目のタイトルだけを列挙します。

<津波被災のメカニズム>

[落橋] 水の浮力と水平力で橋桁が流される
[河川堤防の決壊] 越流による決壊が被害を拡大
[防波堤や防潮堤の損壊] 明暗分けた湾口防波堤の耐震性
[原発事故] 原子炉敷地まで浸水して電源喪失

<構造物被災のメカニズム>

[橋梁の損傷] 「効きにくい」地震動特性で被害軽微
[支承部の損傷] 積層ゴム支承が初めて破断
[ライフラインの損壊] 下水処理場の浸水で本復旧に2~3年

<地盤被災のメカニズム>

[アースダムの決壊] 堤体崩壊は締め固めや遮水の問題か
[液状化] 埋め立て時期が被災の有無を左右
[内陸地盤の損壊] 谷埋め盛り土でまたも被害多発

 筆者は5月1日に初めて被災地に入り、3日まで宮城県内を取材しました。大地震と大津波の発生から50日を経ていたわけですが、道路上のがれきこそ撤去されているものの、まだほとんど手つかずのまま放置されている被災現場が広範囲に及ぶのを目の当たりにしました。阪神大震災との違い、東日本大震災が突き付けた課題の重さを、ひしひしと感じました。

 被災された方々に話を聞くこともできました。彼らのほとんどは早急に復興の方針が示されることを願っていました。よりよい復旧・復興に向けて、何をすべきかが問われています。日経コンストラクションでは、復旧・復興に向けて土木ができること、すべきことを継続して考えていきます。次号の特集では復旧・復興の最新の動きをリポートする予定です。