どこにでもある物静かな住宅街のような雰囲気の町並みが、がらりと変わった。狭い歩道は、車道との段差をなくしてフラットに。2車線だった道路は一方通行に変更し、余裕の生まれた両側に休憩施設を点在させた。車はそれらをよけるように、遠慮がちに通り抜ける。整備を終えた温海(あつみ)川右岸沿いの延長610mの市道には、公募で「かじか通り」と愛称が付いた。


温泉街の活性化を目的に、歩行者中心の道づくりを実践した山形県鶴岡市のあつみ温泉地区。川沿いの生活道路で歩車道境界の段差をなくし、両側に休憩施設を整備した。休憩施設は車両通行の目安の区画を示す外側線(白線)と50cm以上離し、あんどんを模した車止めを設置した(写真:吉田誠)
温泉街の活性化を目的に、歩行者中心の道づくりを実践した山形県鶴岡市のあつみ温泉地区。川沿いの生活道路で歩車道境界の段差をなくし、両側に休憩施設を整備した。休憩施設は車両通行の目安の区画を示す外側線(白線)と50cm以上離し、あんどんを模した車止めを設置した(写真:吉田誠)
整備区間の上流側の夕景。休憩施設の境界部には、あんどん風にデザインしたコンクリート製の車止めを設置した(写真:吉田誠)
整備区間の上流側の夕景。休憩施設の境界部には、あんどん風にデザインしたコンクリート製の車止めを設置した(写真:吉田誠)

 山形県鶴岡市にあるあつみ温泉は、1990年度をピークに観光客が減り続けていた。市は、歩行者中心の道を整備することで温泉街本来のにぎわいを取り戻そうと、「くらしのみちゾーン整備事業」に取り組んだ。

 市温海庁舎建設環境課の剣持一善主査は、「住民や観光客が楽しく歩ける道路をつくるのが目的だった。主役は人。道路の真ん中を堂々と歩いてもらえるような空間を目指した」と話す。

 歩く楽しさを演出し、車の速度を抑える役目を担うのが、道路内の約20カ所に設けた休憩施設だ。コンクリートにタイルを張ったシンプルなものや、川の擁壁と複雑に入り組んだテラスなど、形はすべて違う。