「契約工期の半分の期間で工事を完成させる」。ベトナムに駐在する三井住友建設国際支店の田原一光土木作業所長は真剣だ。ベトナムでは行政当局による土地収用の遅れ、JVの構成員や下請けとなる現地企業の作業の遅れが頻繁にあり、「契約工期内に終わらせるのは大変なこと」(田原所長)だ。


三井住友建設の田原所長。タインチ橋パッケージ3A工事の現場で工期半減、現地スタッフの育成を推し進める(写真:日経コンストラクション)
三井住友建設の田原所長。タインチ橋パッケージ3A工事の現場で工期半減、現地スタッフの育成を推し進める(写真:日経コンストラクション)

 だから、田原所長は工事遅延のリスクを見込んで、契約工期の半分の期間で施工できる計画を立てて入札に臨む。現地企業とのJVで受注したハノイ市内のタインチ橋パッケージ3A工事でも、その方針を実行した。

 この工事は国際協力機構(JICA)の円借款によりベトナム交通運輸省が発注。請負金額は約58億円。契約工期は、2008年10月から10年10月までの2年間だ。10年10月にはハノイ遷都1000年祭が開催される。このときまでに工事を完成させるよう、発注者のベトナム交通運輸省から強く求められた。

 三井住友建設とJVの構成員のベトナム・タンロン社が工区を分担し、それぞれの責任で施工する形をとる。JVの構成比率は6対4。田原所長は、タンロン社の工事が遅れることを想定し、自社の工区が終わった後にタンロン社の工区を支援することを計画に織り込んだ。

 橋脚のフーチングや柱、頭部などのコンクリートの打設に使う型枠は何回も使い回せる耐用性の高い鋼製のものを製作した。足場もその都度、解体せずに次の作業個所にそのまま転用できるものを使った。


I形桁同士をつなぐ横桁を施工している様子。型枠と足場を一体化した仮設を使って安全に早く施工する(写真:三井住友建設)
I形桁同士をつなぐ横桁を施工している様子。型枠と足場を一体化した仮設を使って安全に早く施工する(写真:三井住友建設)