リニア中央新幹線の実現が近付いてきた。

 国交省が設置した交通政策審議会の中央新幹線小委員会(委員長:家田仁東京大学大学院工学系研究科教授)が2010年10月20日に開いた第9回の会合で、ルートごとの費用便益分析の結果を公表。JR東海が推す南アルプスルートに有利な結果が示された。


(資料:中央新幹線調査報告書や中央新幹線小委員会の資料をもとに日経コンストラクションが作成)
(資料:中央新幹線調査報告書や中央新幹線小委員会の資料をもとに日経コンストラクションが作成)

 経済成長率や高速道路の料金、開業年度などを複数設定し、B/C(費用便益比)を試算。経済成長率が1%で推移し、高速道路の料金は現状のままで、2045年に東京―大阪間が開業した場合で試算したところ、南アルプスルートのB/Cは1.51で、南アルプスを迂回(うかい)する伊那谷ルートの1.24を上回った。

 リニア中央新幹線では、東京や名古屋、大阪など大都市近辺は大深度地下を掘進するシールド工法を採用する見込み。甲府から名古屋までの山岳部は長大トンネルの連続が避けられず、最長トンネルは延長20km程度、土かぶり1400m程度の規模になる。中央構造線や糸魚川・静岡構造線などの多くの断層が存在し、大量湧水や地山の自立性など、地質面で様々な課題が懸念される。

 南アルプスルートでは、赤石山脈の東側に糸魚川・静岡構造線が、西側に中央構造線が走る。周辺の脆弱(ぜいじゃく)な破砕帯付近では、大量湧水や岩盤劣化に伴う地圧が懸念される。大土かぶりとなる地域の掘進時には、粘板岩などの地山に塑性押し出しが発生する恐れもある。