土木分野で「官から民へ」の流れが再加速しようとしています。

 大きな流れの一つは、PPP(官民連携)やPFI(民間資金を活用した社会資本整備)の事業拡大路線です。政府は6月に閣議決定した「新成長戦略」で、社会資本の整備や維持管理、更新に当たって民間を最大限に活用していく方針を掲げました。PFI事業の規模は、2020年までの11年間で少なくとも約10兆円以上を目指すと明記しています。09年末までの約10年間の累計額4.7兆円の2倍以上となる事業規模です。PFI事業の拡大には土木案件への広がりがカギを握っています。

 もう一つの大きな流れは、発注者支援業務での民間受注の拡大です。国土交通省発注の発注者支援や公物管理補助などの業務は、公益法人である建設弘済会や建設協会が長年にわたって独占的に受注してきました。前原誠司国交相(当時)が7月に建設弘済会などを3年以内に解散させる方針を打ち出したことで、受注拡大を狙う建設コンサルタント会社の動きが活発化しています。

 そのような状況を受けて、日経コンストラクションは11月12日号で「『民間任せ』のススメ」と題する特集を組みました。民間の仕事の広がりをにらんだ民間各社の動きを追うのはもちろん、先行する民間活用プロジェクトで土木の仕事がどのように変わったかを明らかにしています。PPP関連では、土木分野の大型PFI事業として国内初の事例である「羽田空港国際線エプロン」、国交省直轄の河川事業でPFI手法を採用した全国初の事例となる「水の郷さわら」など4事例を取り上げました。民間の潜在力をうまく引き出すことができれば、土木のありようを大きく変える可能性があることが分かります。

 羽田空港国際線エプロンのPFI事業では、大成建設を代表者とする特別目的会社(SPC)が、設計から施工、完成後25年間の維持管理まで一手に引き受けています。民間の創意工夫の例として目を引くのは、エプロンの舗装に無筋コンクリートを採用したことです。疲労度設計手法によって、工事費が最も安価な無筋コンクリートでも要求性能を満たせることを確認しての採用でした。道路橋では、工事費が高い高強度繊維補強コンクリートの「ダクタル」をあえて使っています。橋の取り付け部の盛り土工事や将来の維持管理のコストも見据え、トータルで最も安くなると判断してのことです。メリハリを利かせた維持管理手法も、興味深い提案です。詳しくは特集記事をお読みください。

 土木分野でのPFI事業拡大のハードルは決して低くありませんが、今後の社会資本の整備や管理・運営を考えるうえで民間の力を効果的に活用することは避けて通れない重要なテーマです。日経コンストラクションはこれからも、民間活用の最前線の動きを追っていくつもりです。