日経コンストラクションの人気コラム「ねっとわーく」(読者投稿欄)には、技術の伝承がうまくいっていないことを憂える声がたびたび寄せられます。技術伝承の重要性が叫ばれて久しいですが、思うようにはかどらず、そうこうしているうちに団塊の世代の大ベテランが次々と退職して、さらに厳しい状況に直面しています。

 そもそも、何もかも伝承するなんて、どだい無理な話です。事ここに至っては、捨てるべきは捨て、伝承する技術を厳選して実効性を高める必要があります。日経コンストラクション9月24日号の特集「技術伝承の危機」では、伝承すべき技術を絞り込む取り組みにスポットを当てたほか、伝承すべき技術とは何かを考えました。効果的に伝えるための各社の工夫例も紹介しています。

 東電設計は2009年に、伝承すべきコア技術をリスト化しました。その数は数百に上ります。リストでは、その技術を持っている人(指導者)と、それを引き継ぐべき人(継承者)の名前を列挙しました。継承者の欄が空欄なら、継承者が育っていないということです。現状のままでは伝承できない技術を目に見える形にした点で、興味深い取り組みだと思います。

 技術の伝承に向けた建設会社や建設コンサルタント会社の工夫の数々を見ていくと、各社の危機感が伝わってきます。いま取り組まなければ手遅れとなるでしょう。ぜひ特集記事をご一読いただき、この問題を改めて考えていただければと思います。