国内の公共事業の減少が見込まれるなかで、どのようにして業容を拡大または維持していくのかーー。日経コンストラクションが主要な建設会社に尋ねたところ、有効回答134社のうち約6割の会社が「国内官公庁土木工事のシェアを高める」という方針を最も重視すると回答しました。主要な建設コンサルタント会社に対する同様の問いでも、「従来の建設コンサルタント事業のシェアを高める」という方針を重視する会社が少なくありませんでした。

 確かに本業の強化は大事ですが、パイが小さくなるなかでシェアの拡大を狙う会社が多いわけですから、激戦は必至です。一方、競争が激化する従来の土俵を尻目に、新たな土俵に活路を見いだそうとする会社が出てきました。日経コンストラクション9月10日号の経営動向特集「建設会社・コンサルタント決算ランキング2010」では、民間や海外などの成長市場に乗り出して元気回復を図るそのような試みを追いました。題して「『国内公共』に固執しない生き方」です。

 前原誠司国土交通相は日経コンストラクション2009年10月23日号のインタビューで、公共事業を減らすという前提に立って、「それでも、業界の皆さん方がしがみついてでも業界の中で頑張っていくというのであれば、それでもよろしい」と言い放ちました。当然ながら、しがみつきたくてしがみつくことなどないわけで、従来の土木に依存しない生き方があれば、それを提示することは重要だと考えます。

 もちろん、従来の土木の枠を超えて新事業に乗り出そうとすると、読めないリスクが伴います。競争力の劣る分野を削り、戦える分野に絞り込んで生き残りを図ってきた準大手建設会社が、事業拡大に消極的なのは分かるような気もします。いくら成長市場といっても、あるいは成長市場だからこそ、戦う相手は異業種など多岐にわたり、ある意味で従来の土木市場以上の厳しい戦いが待ち構えています。

 特集で取り上げた建設会社や建設コンサルタント会社は、それでも新しいマーケットに挑んでいます。昨今の成長戦略の議論でも、内向きが過ぎると活力を失うといった指摘がありますが、土木界もこれまでは内向きに縮こまりすぎていなかったでしょうか。社会のニーズの変化に応じて仕事の領域を変えていく努力を続けなければ、土木界の閉塞感は打破できません。日経コンストラクションは今後とも、「拡土木(土木の領域を広げる)」あるいは「新土木(新しい土木の領域を打ち立てる)」といった視点から、活力回復につながる試みを追っていく所存です。