維持・補修の仕事は、どっぷりつかってみないとその面白みが見えてこないのかもしれない。新設の仕事の片手間でやっている限りは、維持・補修のやりがいが感じられないようだーー。日経コンストラクション8月27日号で「補修で笑う」という特集を企画してみての、率直な感想です。

 維持・補修といえばどうしても、利益が出にくい、細かい仕事が多くて面倒だ、ものづくりのやりがいが感じられないなど、否定的なイメージが先に立ちます。しかし、特集にご登場いただいた土木技術者の多くは、自ら技術を磨いて維持・補修に積極的に取り組み、やりがいを見いだしていました。売り上げや利益も付いてきています。

 維持・補修は土木分野では数少ない有望市場の一つですから、他社に先んじて有効な手を打てば果実を手にする可能性は高まります。青森県弘前市の建設コンサルタント会社、キタコンは、県内約800橋の劣化状況などを自主的に調査しました。誰に頼まれたわけでもありません。維持・補修市場の拡大を見据えた取り組みです。同社は、独自に調べた各橋の劣化状況に基づき、県に「対策を実施した方がいい」と提案し、競争入札やプロポーザルで多くの補修関連業務の受注につなげています。

 2003年に民事再生法の適用を受けた大阪市の酒井工業は、再出発後に橋梁の維持・補修に特化することで、完成工事総利益率が10%以上の利益水準を5年連続で達成しています。社長いわく「皆が嫌がるところに宝が転がっている」。逆に「皆がおいしいと思う案件はたたき合いになることが多く、結果として利益を出すのは難しい」とも言っています。同社がどうやって高い利益率をはじき出しているかは、ぜひ特集記事を読んで確認してください。

 よく言われるように、新設の仕事の延長線上で取り組んでいては維持・補修の仕事はものにできません。会社ごと維持・補修への専門特化、あるいは維持・補修専門部隊の分離・独立なども考える必要がありそうです。