おかげさまで日経コンストラクションは2010年7月23日号で創刊500号を迎えました。創刊号は1989年10月13日号。創刊1年目の表紙は、現場所長の人物写真を大胆にあしらった構図で、本誌が掲げる現場主義を表現していました。今号の表紙には、創刊号をはじめとして創刊1年目の表紙のいくつかも散りばめています。

 創刊当時は、海外企業の参入障壁が問題になるほど国内の建設投資が旺盛で、ビッグプロジェクトもあちこちで動いていました。時代の様相はだいぶ変わりましたが、日経コンストラクションの現場主義の方針は不変です。これからも、実務の最前線で頑張る方々の目線で、有用な情報を伝えていきたいと思います。土木の仕事に携わる方々が厳しいなかにもやりがいを見いだし、建設産業に活力を生み出すための情報を提供していく考えです。

 創刊500号記念特集は「再発見、ニッポンの土木技術」。逆風下で見失いがちな技術者の使命や誇りをいま一度、思い起こしてもらいたいとの思いから企画しました。

 都市部で淡々と進められている複雑な土木工事も、外国人から見れば「ミラクル」と映ります。海外からの視察が相次ぐ小田急電鉄小田原線の下北沢駅付近の現場は、連続立体交差化工事と複々線化工事を同時に進めています。地上を走る軌道の直下に、新たに2層分の軌道を設ける工事です。営業線を運行させながら施工していることに、海外からの視察者は驚嘆するようです。

 地上の営業線を運行させながらその直上に高架橋を架設したり、直下にトンネルを築いたりする連続立体交差化工事は、各地で行われています。施工の担い手にとっては奇跡を起こしているという意識はないかもしれないし、やって当たり前というプレッシャーさえ感じているかもしれません。しかし、見方を変えれば「ミラクル」なのです。

 特集では、このように海外からの評価が高い日本の土木技術をクローズアップしたほか、技術開発の最前線の話題も収録しました。地上発進、地上到達という発想でシールド工法の常識を覆した「URUP(ユーラップ)工法」がいかに生まれたかも追いました。画期的な技術はまだまだ生み出せるし、縮こまってはいけないと活を入れられるような技術開発ストーリーです。

 特集ではさらに、「10年後に必要となる土木技術」と題して、主要な建設会社31社と建設コンサルタント会社17社が考える今後の技術開発の動向や、143人の第一線の技術者が考える分野別の有望技術をまとめました。ぜひご一読ください。

 なお今号では創刊500号スペシャルとして、写真家の篠山紀信氏に土木工事現場を撮影してもらう「現場紀信」の第2弾も掲載しています。被写体は東京ガス扇島LNG地下タンク(横浜市)。世界最大の容量となるLNGタンクです。日経コンストラクションは一味違う視点から土木の魅力を掘り起こしていきたいと考えており、この企画はこれからも続けるつもりです。