海外進出を積極的に進めるたびに大やけどを繰り返した建設会社が、今後の海外進出に尻込みするのは分からないでもありません。しかし、国内の建設市場が縮小し、新興国を中心に建設市場が拡大するのは目に見えています。建設会社や建設コンサルタント会社にとって、あるいは公益事業者にとっても、海外進出は避けて通れないテーマです。では、いかにリスクを回避して実利を上げられるか。日経コンストラクションは、今後の市場拡大が見込めるベトナムと、以前から日系企業が実績を重ねているシンガポールに記者を派遣し、最前線で奮闘する技術者たちの姿を通じて、この問題を考えようとしました。それが、7月9日号の特集「それでも挑む海外」です。

 現地取材で見えてきた海外進出の方向性の一つは、「現地化」です。つまり、現地に根を張り、現地の技術者を育成することで、発注者との交渉力を高めたり、現地スタッフのネットワークを活用して受注につなげたりするわけです。佐藤工業の現地法人、佐藤工業シンガポール社にいたっては、社員225人のうち8割以上の188人が現地スタッフであるだけでなく、社長や現場の所長、副所長といった主要なポストにも現地スタッフを起用しています。発注者との交渉で力を発揮するなど、現地の文化や慣習、言語などに基づく対応ができるのが強みです。同社は5年以上、年間200億~250億円の売り上げを計上しています。

 一方で、よく指摘される「内なる国際化」も重要なテーマでしょう。現状では事業の進め方や制度、習慣などの面で国内の仕事と海外の仕事のギャップが大きすぎて、海外進出のハードルが高くなっているので、そのギャップを埋めることが必要ではないかという議論です。韓国の建設業がいまや輸出産業になっていることには、重要なヒントがあるように思います。

 特集では、「現地化」を進める民間企業の取り組みのほか、発注機関や建設会社、建設コンサルタント会社の海外戦略などをまとめました。ぜひご一読ください。