公共事業の主要発注機関を対象に入札・契約制度の実態を調べたところ、建設産業の保護に傾く動きが顕著に表れました。日経コンストラクション6月11日号の特集「保護策強まる入札制度」で詳述しています。

 都道府県の7割以上が、2009年5月以降に低入札価格調査の調査基準価格を引き上げていました。いまや、都道府県の調査基準価格の上限値は90%が主流です。加えて、低入札価格調査の失格基準を引き上げたり、最低制限価格制度の適用範囲を拡大したり、低入札で受注した会社の手持ち工事量を制限したりと、低入札対策を強化する動きが目立ちます。2009年度の土木工事の平均落札率は、40道府県で前年度より上昇しました。

 このような落札水準の引き上げ策とともに進んでいるのが地元保護策です。落札水準引き上げ策の拡大は調査前から予想されたことでしたが、地元保護策の広がりは予想以上でした。

 例えば、大阪市は10年6月発注分から、予定価格3億円未満の土木工事の事後審査型制限付き一般競争入札で、市内に本社のない建設会社が参加できないようにしました。市内に支店があっても参加申し込みができません。都道府県や政令市では、総合評価落札方式の入札の加算項目に、「本社所在地などの地域要件」や「地域への貢献度」、「下請けへの地元企業の活用度」を設定するなどして、地元企業を保護する動きが強まっています。

 一方、09年度は、官公需に占める中小企業者向け契約の目標が過去最高の52.4%に引き上げられていました。09年度の建設会社の受注実績を見ると、地元企業や中小企業を保護する政策の影響がうかがえます。

 今号の「NEWS焦点」では、主要建設会社の2010年3月期決算の内容を速報していますが、土木売上高上位20社のうち国内官公庁の土木受注高を公表した17社の加重平均値は前年度比で15.3%減でした。これに対し、国土交通省が5月12日に発表した建設工事受注動態統計調査報告によると、09年度の公共土木工事の元請け受注高は前年度比で6.0%減。09年度は経済対策として大型の補正予算が組まれましたが、全体に補正予算の土木受注への効果は薄く、その恩恵を受けたのも、主に地方の建設会社だったようです。

 全国展開する建設会社にとって地元企業保護や中小企業保護の強まりは今後の受注戦略に大きな影響を及ぼします。NIPPOのように、地域要件の強化を見据えて地方の施工専門の子会社を強化し、元請けとしての受注機能を持たせようと動いている会社も出てきています。

 公共土木工事の発注の規模や方向性が変わりつつあるだけに、戦うべき土俵をどこに定めるかは建設会社にとって死活問題です。日経コンストラクションでは今後とも、かじ取りのヒントになる情報の提供に努めていく所存です。