余裕を持って土木の仕事をするのが難しい時代になりました。仕事に追われる毎日を送っている方は多いのではないでしょうか。市場の縮小や脱談合による受注競争の激化を受けて、さらには政権交代による方針の転換や視界不良、はたまた入札・契約制度が目まぐるしく変わるのを受けて。ダーウィンの進化論を持ち出され、環境の変化に適応した者こそ生き残るなどといわれても、いろいろな物事が急激に変わりすぎるのだと、うらみ節の一つもぶつけたくなります。

 でも、泣き言をいくら並べても何も解決しません。ここは一つ、以前はぬるま湯につかっていたのだと悟りを開いて、環境の変化に前向きに適応するしかありません。仕事に追われてばかりでは、疲れだけが残って満足のいく成果につながらないからです。段取りを工夫して、余裕のない時代でも余裕を生み出し、良い仕事をしたいものです。日経コンストラクション3月12日号の特集「段取り名人」は、そうした思いで企画しました。

 特集では、建設会社や建設コンサルタント会社、発注機関に勤める9人の「段取り名人」にご登場いただき、それぞれの実務に即して段取りの秘訣を開陳してもらいました。同時に、組織的に段取り能力を高めようとしている会社の取り組みにスポットを当てています。詳しくは特集記事をお読みください。

 余談ながら、今号の編集後記「編集部から」に、特集を担当した一人が以下のような文章を書いています。

 「工程が一つ狂うとすべてが悪い方向に行く。それを防ぐには早めに仕掛けよ」。「どこがネックでどこは放っておいても大丈夫なのか、最初にはっきりさせて臨め」。「ギリギリでやっている人は常にギリギリ。仕事に追われるのではなく仕事を追え」。「余裕がなければ無駄なものが見えてこない。早く手を付ければ無駄なことをしなくて済む」。「段取りが悪くても偶然成功することはある。成功しても反省せよ」──。取材で聞いた段取り名人たちの言葉の一つひとつが、胸に突き刺さった。

 日経コンストラクション編集部も、「段取り名人」を生む組織にしていきたいと考えているところです。私たちも段取り名人たちの教えを参考にしたいと思います。