クレーンなどの建設機械が転倒し、第三者に危害を及ぼすなど、2009年も同じような建設事故が繰り返されました。安全対策のルールがあっても守れない。土木現場でたびたび事故が発生して危険性が明らかな作業なのに防げない。極めて残念なことです。

 ではどうすれば事故を防げるのか。日経コンストラクション12月25日号の特集では、繰り返される事故を防ぐ手だてを考えました。題して「その対策では事故を防げない」。個別の事故事例から教訓を引き出す常設欄「事故に学ぶ」では追い切れないような範囲に取材を広げ、建設会社などの受注者の取り組みや安全対策の専門家の知見を紹介しています。

 安全にとって、マンネリは敵です。近道を通りたい、複雑で面倒な作業の手順を省略したいといった「近道・省略行動」も、事故につながる要因になります。それを防ぐ手だてに万能薬や特効薬などなく、日々の地道な活動が成否を分けます。建設会社の取り組みを見ても、現場独自の対策を通じて、人づくり、組織づくり、環境づくりを粘り強く進め、安全への意識を現場全体に浸透させることに腐心していることがうかがえます。

 ただし、事故の実態や傾向を把握していないために十分な対策を取ることができていない場合があることも指摘されています。労働安全衛生総合研究所人間工学・リスク管理研究グループの高木元也主任研究員の調査によれば、例えばトラック運搬作業や立ち木の伐採・伐倒作業は労働災害による死者数が比較的多いのに、建設会社の安全担当者たちはそれを認識していませんでした。測量などの調査中や作業時以外の移動中での死亡事故も少なくありません。事故の実態や傾向を把握して対策を立てることがぜひとも必要です。詳しくは特集記事をお読みください。

 なお、今号ではズームアップ欄で八ツ場ダムの湖面2号橋(県道林・東吾妻線2号橋)の工事現場を取り上げていますが、12月18日に同現場で発生した死亡事故については印刷工程上盛り込めませんでした。後日改めて、日経コンストラクション誌上に事故の原因などを掲載したいと考えています。