(写真:日経コンストラクション)
(写真:日経コンストラクション)


香港の港に架かる世界最大級の斜張橋、ストーンカッターズ橋の工事を指揮するのは42歳の花田紀明だ。シビアな契約社会でもまれた香港での16年間の経験が花田を支えている。相手を自分のペースに巻き込む交渉力や決断力、部下の能力を引き出すマネジメント力で大現場を切り盛りする。国内の建設不況が続くなか、海外に乗り出す建設会社にとって、まさに花田のような能力を備えた人材が必要とされている。(文中敬称略)

 ストーンカッターズ橋の建設現場で、地場の作業員に話しかける男がいた。183cmの大柄な体躯が目立ち、ひときわ大きな声が響く。男は最後に広東語で冗談を言ったのか、作業員はほほ笑みながら去って行った。

 男の名は花田紀明。1988年に前田建設工業に入社して20年の経歴のうち、4分の3を香港で過ごしてきた。いまや香港人や英国人、フィリピン人、ネパール人など、さまざまな国籍の職員を束ねる所長だ。42歳にして大現場の所長に抜てきされた。