学校の教師も学生から評価される時代。発注者が受注者を一方的に評価するのでなく、受注者が発注者を評価することがあってもいいのではないか。

 読者からのそのような声に応え、日経コンストラクションは建設会社や建設コンサルタント会社にお勤めの方へのアンケート調査に基づいて、発注機関の実力ランキングを取りまとめました。毎年調査している工事成績・コンサルタント業務成績ランキングと併せ、特集「受発注者相互評価ランキング」として10月24日号に掲載しています。

 発注機関のランキングは、受注者からの評価が10件以上寄せられた26の発注機関を対象に順位を付けました。国土交通省の8地方整備局と北海道開発局、13の都道府県、高速道路会社4社が対象です。

 26発注機関のランキングの詳細は特集記事を読んでいただくとして、北海道開発局への評価が北海道庁を下回ったことには驚きました。北海道の総合順位が13位(都道府県では2番目)だったのに対し、北海道開発局の総合順位は20位(国交省の地方局では最下位)に沈みました。福田康夫前首相から組織の廃止問題が「懸案事項」と位置付けられた北海道開発局にとっては、看過できない評価ではないでしょうか。

 日経コンストラクションでは念のために、前出のアンケート調査とは別に、北海道開発局と道庁の双方を評価した回答者数人に両者の相対評価を求めました。そこでも、発注者としての能力は北海道開発局より北海道庁の方が高いとの意見が大勢を占めました。

 北海道開発局はどこが劣っていたのでしょう。北海道開発局が道庁のみならず発注者全体の平均よりも評価が低かった項目は、ランキングで対象にした全14項目のうち、11項目に上りました。特に評価が低かったのは「施工方法、コンサルタント業務に対する提案やアドバイスの頻度」と「総合評価落札方式、プロポーザル方式での評価能力」です。両項目とも20点満点で5点台と厳しい評価でした。

 一方、2007年度の工事成績や建設コンサルタント業務成績に基づく受注会社のランキングでは、基本にしっかり取り組みつつ独自の提案を積極的に実施した会社が上位に着けました。

 過去の工事成績や業務成績も評価する総合評価落札方式とプロポーザル方式の拡大によって、成績の高さがその後の受注を左右する大事な要素になってきたので、各社は成績を高めようと必死です。しかも国交省は、良い仕事をした会社の得点がより高くなるように成績評定の仕組みを変えていこうと動いています。業務成績についてはこの10月から新しい運用を始めました。工事成績は2009年4月の運用開始へ向け見直し作業を進めています。これまで以上に、工事成績や業務成績の重要性が高まることになるでしょう。

 特集記事では成績上位の会社が成績を高めるために払った努力の数々を紹介しています。各社の取り組みをお読みいただくと、成績評定の仕組みに多少問題があったとしても、発注者が受注者の仕事を評価する項目を明確にし、受注者間で競わせることの重要性が実感できるのではないでしょうか。競わせる方向が間違っていなければ、そして発注者の評価に納得できるだけの妥当性があれば、工事や建設コンサルタント業務のレベルアップにつながるはずです。

 翻って考えると、発注者の仕事ぶりを評価し、発注者間で競わせることができれば、公共事業の改善に大きく寄与するはずです。発注者が良くならなければ土木界は良くなりません。日経コンストラクションでは今後とも、この問題に取り組んでいきたいと考えています。