日経コンストラクションに読者の方々から寄せられる声のなかには、若手技術者の現状を嘆くものが見受けられます。最近の若手はやる気が感じられない、探究心が足りない、ほどほどに仕事をこなしていて物足りない、育てがいがない……。

 そうした手厳しい声とともに、若手の現状に同情する見方もあります。ビッグプロジェクトや新設工事が少なくなったので、やりがいが感じられないのではないか。社会のイメージが悪くて批判を浴びながら仕事をし、しかも受注競争の激化で仕事に余裕がなくて、かわいそうだ……。

 本当にそうなのでしょうか。最近の若手はやる気がなくて、やりがいも感じていないのでしょうか。日経コンストラクションでは土木の最前線で働く若手に取材し、若手の本音を探ってみました。その結果を8月8日号の特集「侮っていませんか? 若手のやる気、土木のやりがい」にまとめました。

 実際に若手に取材したデスクや記者の出した結論は、タイトルで示したとおりです。つまり、上司や先輩が心配するほど、若手はやる気がないわけではないし、やりがいを感じていないわけでもない。ただし、40代や50代の先輩たちとは、やる気の出し方もやりがいの感じ方も違うようです。特集記事を読んで若手の生の声に接してみてください。

 特集で取り上げた11組13人の若手のなかには、20代で転職を経験した人もけっこういました。その点では、「最近の若手はすぐ辞める」という見方は間違っていません。辞められた会社の上司からすれば、「育てがいがない」と物足りなさを感じるのも無理のないことと思います。

 しかし、転職後の若手の情報はなかなか入ってこないものです。若手は転職後に生き生きと仕事をしているかもしれません。実際、特集で取り上げた若手技術者のなかには転職を経て自分の道を見つけ、目覚しい仕事ぶりを見せている人もいます。

 最近の若手は自分らしく働くことを重視しています。先輩たちからすれば腰を据えずにふらついていると見えるのも、自分らしく働ける環境を探しているからなのでしょう。

 もちろん、やる気がなくてやりがいを感じていない若手もいるでしょう。でもそれはいつの時代にもいたはずですし、疲弊した組織や先輩が若手のやる気ややりがいを奪っている可能性も否定できません。若手を育てるには、「最近の若手は育てがいがない」と嘆く前に、若手の実像を理解することが不可欠です。