極端な安値受注こそ少なくなりつつあるようですが、いまなお低入札は続発しています。では、低入札の工事で赤字は回避できているのか。あるいは、赤字を回避できた施工者と赤字が膨らんだ施工者の対応にはどんな違いがあるのか。日経コンストラクション6月27日号の特集は「赤字脱出策の明暗」と題して、こうした問題を検証しています。

 国土交通省が公表を始めている低入札価格調査案件のコスト調査結果に基づいて、入札時の実行予算と完成時の実績額を比較し、さらに施工者への取材を通して実態の解明に挑みました。

 特集を担当した瀬川記者が国交省の公表データを分析したところ、官積算通りの工事原価をかけて施工した場合に粗利益が出るか否かの境目は落札率(予定価格に対する落札価格の比率)90%前後。一方、完成時の施工者の実績額でみると、原価割れとなった赤字工事も粗利益を出せた黒字工事も、落札率100%近くから50%前後まで幅広く分布しています。落札率と粗利益率との関係から傾向を読み解くと、落札率が80%を上回る工事は黒字に、下回る工事は赤字になる傾向があるようです。

 そして、リスクの読み方が甘ければ赤字が膨らんでしまいます。リース会社から思うようにトラッククレーンを借りることができず、経費がかさんで赤字に陥った工事もありました。入札時の実行予算よりも粗利益を増やした取り組みと併せ、詳しくは特集記事をお読み下さい。

 日経コンストラクション6月27日号ではこのほか、IT(情報技術)特集「使って実感、“三次元”の効用」を掲載しています。三次元モデルでの設計、三次元情報による情報化施工、三次元システムに基づく維持管理など、土木事業の各段階で広がる三次元化の動きを追いました。土木事業における三次元データの活用が、身近になってきたことが実感できます。

 「NEWS焦点」欄では、6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震による土木被害の状況を速報しています。地震直後に現地に飛んだ記者が被害状況を確認し、専門家への取材を通して短期間でまとめた記事です。大規模な斜面崩壊が多発した理由、構造物被害が局所的だった理由などを地質や地震動などの特性から考察しています。こちらもぜひご一読下さい。