逆転、逆転、また逆転――。公共工事の入札で最低価格の提示者以外が落札する「逆転落札」が、当たり前になる時代が訪れようとしています。

 日経コンストラクションは、国や都道府県、政令市、民営化会社など土木工事の主要発注者82機関を対象に入札制度の実態調査を実施し、6月13日号の特集で動向をまとめました。

 調査対象の全発注機関が2007年度に実施した1万5000件あまりの総合評価落札方式の入札のうち、逆転落札に至った割合は17%。2006年度の10%から7ポイント上昇しました。2008年度はその割合がさらに高まることが予想されます。

 要因の一つは、落札率の低下に歯止めをかけようと、低入札価格調査の調査基準価格や最低制限価格を引き上げる動きが発注機関で目立ってきたことです。加えて、総合評価落札方式で技術点を高める動きも強まっています。47都道府県と17政令市のうち、2008年度から技術点を高める自治体は29団体に上ります。

 価格競争の幅が狭まる一方で、技術競争の余地が広がるのですから、逆転落札が起きやすくなるわけです。すでに2007年度の実績で逆転落札の割合が50%を超えた都道府県も、鳥取県の58.5%をはじめとして3県あります。詳しくは特集記事をお読み下さい。

 日経コンストラクション6月13日号では前号(5月23日号)の特集「建設会社のリアルな『受注力』」の続編として、2007年度主要土木工事入札結果の調査記事も収録しています。続編では特に逆転落札に着目して動向を描きました。逆転落札の割合を工種別に分析し、逆転落札の割合が8割と極めて高い山岳トンネルと2割に満たない舗装を中心に、建設各社の受注戦略を取材しています。

 全般の傾向として逆転勝ちの割合の高い会社は受注率(入札参加件数に対する落札件数の割合)も高く、落札金額以下の入札価格を提示しながら落札できない逆転負けの割合の高い会社は受注率が低くなっています。前述したような逆転落札が起きやすい状況とあいまって、いかに逆転落札して受注率を高めるかが建設各社の重要な経営課題となってきました。

 さらに本号では「NEWS焦点」欄で、主要建設会社の2008年3月期決算の概要を速報しています。土木売上高上位20社では、土木工事の完成工事総利益率が過去最低の水準まで落ち込みました。利益を確保するには、これまで以上に得意分野に注力して「選択と集中」や「選別受注」を推し進める必要がありそうです。

 本号ではこのほか、中国四川大地震での新たな技術的知見を「NEWS焦点」欄で紹介し、動向解説記事として「脱談合時代の『技術の売り方』」を掲載しています。土木界のいまを切り取り、今後を展望する日経コンストラクションをどうぞ手にとってお読みください。