太田英将氏は明治コンサルタントを経て,1990年に建設コンサルタント会社の太田ジオリサーチを創業。専門の地質調査だけでなく,建設IT分野全般にわたって造詣が深い。早くからホームページによる情報発信をビジネスに結びつけてきたほか,最近はブログで毎日情報を発信している。このコラムでは,建設ITの旬な話題を素材にし,太田氏に土木の実務者の視点から考察を加えてもらう。(日経コンストラクション編集部)
太田英将の建設IT御意見番
目次
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ソフトブレーンに学ぶ新分野への進出法
1990年代にソフトブレーンという会社を知っていた人は,有限要素法(FEM)解析のソフトウエア会社のイメージがあると思う。同社の製品「2D-σ」などは非常によく売れた。このソフトのおかげで,一部の専門家しか扱えなかったFEMの解析技術を,多くの一般の技術者が使えるようになった。その後の数値解析ブー…
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技術が十分なレベルに達しても立ち止まれないジレンマ
筆者は1990年代の初めごろからCADを使い始めた。当時はペンプロッターを使っていたが,その後はインクジェットプロッターに変更。先日は4代目となるプロッターを導入した。
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ネットで遠くの技術者とも連携して総合評価に臨む
筆者は1990年代の初めごろからCADを使い始めた。当時はペンプロッターを使っていたが,その後はインクジェットプロッターに変更。先日は4代目となるプロッターを導入した。
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三次元のものをそのまま三次元で描く利点は
BIM(Building Information Modelling)は,いまアメリカの建築分野で発展し,日本にもいよいよ波及してきた。ひとことでいえば,実際のものをつくる前にパソコンの中でバーチャルにつくる技術だ。三次元のものを最初から最後まで三次元モデルで設計することにより,従来の二次元の手法…
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人材育成にも活用できる“Podcast”
団塊の世代の大量退職により人材が不足し,技術の伝承に支障をきたすと言われている。この問題に関して,建設産業では二つの大きな課題を抱える。一つは,人材の育成によって技術を伝承していく方法論。もう一つは,育成すべき人材自体の不足だ。後者がより深刻だが,今回は前者の人材の育成に情報技術(IT)を生かす方法…
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ITで味付けした“情報”と“わかりやすさ”が売り物に
夏から秋にかけて,いろいろな学会などが研究発表会を開催する。そこでは機器展示など新技術の紹介コーナーもある。新技術は当然のことながら情報技術(IT)を組み込んだものが多い。ITによって,いままでよりも細かく計測できたり,取り扱いが容易になったりする「改善型」の技術がほとんどだ。最近,改善型とはやや…
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引き込まれがちな仮想現実の世界にご用心
7月に新潟県中越沖地震の被災地に行ってきた。「行ってきた」というのは文字通り行って,見てきただけで,そこで起きた自然現象を理解してきたこととは本質的に異なる。いままでの現場調査の経験と地質学的な知識の引き出しから,現場で似通ったものを思い出して,自分なりに納得しながら見て回るのだが,十分に理解しき…
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ITが「常に災害を意識した社会」への転換促す
10月1日から気象庁は一般向けの緊急地震速報の提供を始める。大きな揺れが来ることを事前に知ることができるので,人的被害は大きく減少するに違いない。7月に発生した新潟県中越沖地震では,システムを導入していた建設現場などで有効に利用された。気象庁の発表では昨年8月からの約1年間に,緊急地震速報を54回…
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ITで可能なことと不可能なこと
以前,写真を撮影しただけで,がけ崩れの対策工種を選定できる“エキスパートシステム”を考えてくれという依頼が来た。筆者はもちろんエキスパートシステムの専門家ではないので,インターネットで見つけた専門家に相談に行った。
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海外で気付いた意外なITツールの進化
6月下旬に(社)日本地すべり学会の地すべり視察団の一員として7日間,オーストリアを訪れた。この視察を通して,身近なツールが劇的に変化していることに改めて気付いた。デジタルビデオカメラである。
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ネット上で技術者リストを公開すべし
1992年に英国で製作された映画「ランドスライド」は,記憶を喪失した地質技術者が働くダム現場を舞台にしたサスペンスだ。
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ICT大綱は社会の変革も狙っている
国土交通省は5月末に,情報通信技術(ICT)の利用の方向性を示した「国土交通分野イノベーション大綱」,いわゆるICT大綱を公表した。このICT大綱を要約すると,ICTを利用して民間活力を刺激し,社会の良い意味での変革を起こそうというものだ。
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韓国企業に学んで調達制度の変更に備えよう
3年ほど前,韓国企業からソフトウエアの注文があった。当社が開発,販売し,日本語環境で動くソフトウエアで,日本語対応のウィンドウズ上でないと動かない代物だ。それらの事情を告げて,韓国ではうまく動かないかもしれませんよと忠告したが,日本語環境のパソコンを用意してでも使いたいとのことだった。
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地質断面図に対する認識の違いはITで解消できる
地質調査で得たデータは,設計・施工段階に地質断面図として引き継がれる。設計者や施工者は,地質断面図に描かれた境界を「間違いない線」として認識しているだろう。ところが,地質調査に当たった技術者は「いまのデータでは最善の線」と思っていることがほどんどだが……。
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ITの次の活路はリスク予測
建設業界にとって,ITの利用で業務の効率化に力を注ぐ時期はすでに終わったととらえてよいだろう。次に建設ITが目指すべきものは果たしてなんだろうか──。私は多分,リスク予測やリスクマネジメントの分野になるだろうとみている。
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“パテント・トロール”の脅威を知ってますか
いま米国では,情報技術(IT)のソフトウエアなどをめぐって,「パテント・トロール」が大問題になっている。パテント・トロールとは,特許権侵害を理由に訴訟を起こし,高額の和解金を獲得しようとするビジネスだ。トロールは北欧の伝説の妖怪を意味するので,直訳すると特許の妖怪というところか。
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ウェブで得られる情報,得られない情報
3月25日,能登半島でマグニチュード6.9の地震が発生した。筆者が属する(社)土木学会地盤工学委員会斜面工学研究小委員会でも翌26日には調査に行くことが提案され,電子メールを使って日程を調整。3月30日から3日間の現地調査を行うことになった。
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地盤データベースに失敗の教訓を生かせ
国土交通省は3月,「地盤情報の集積および利活用に関する検討会」(委員長:東京大学の小長井一男教授)の提言を受け,ボーリング調査で得た地盤情報をデータベース化してインターネットを通じて無償で一般に公開することを明らかにした。