工事の工程ごとに第三者による検査を行い、不備や不良個所がないことを確認したうえで次の工程に進むことを義務付ける制度。設計者でも施工者でもない第三者が、建築主に直接、雇われて検査するのが特徴である。

米国カリフォルニア州では、1933年のロングビーチ地震を機に、37年に制度ができ、UBC(Uniform Building Code)に規定されている。インスペクターには、州あるいは市の職員である公的インスペクターと、民間で州あるいは市に登録されたスペシャルインスペクターの2種類がある。公的インスペクターによる検査は、工事を6~8段階に分けて、各段階が終了するたびに、施工者がインスペクターに検査を求める。公共工事や一定規模以上の民間工事では、これに加えて、スペシャルインスペクターによる特別検査が必要になる。これは建築主がスペシャルインスペクターを直接雇用し、特別検査が必要な工事の施工中には常駐して、検査結果の報告書を建築主や市(州)、設計者に交付しなければならない。

日本ではインスペクター制度に代わる制度として、行政による中間検査と完了検査の制度がある。以前は制度そのものの実効性が低く、あまり効果が上がっていなかったが、99年4月に国が「建築物安全安心推進計画」をまとめ、国が中間検査と完了検査の実効性を高める運動を展開。98年度には38%だった完了検査率を2002年度には68%にまで引き上げるなど、建築物の品質の確保に努めている。ただし、米国のインスペクター制度に比較すると、検査の頻度が少なく、欠陥建築物を防止する効果に乏しい。行政に比べて頻繁に検査を実施する民間ベースのインスペクターも登場しているが、業務を依頼する建て主は、欠陥住宅対策に強い関心をもつ一部の層に限られており、制度の普及にまでは至っていない。