“架け橋”の希望を受けて中2階にブリッジ
また野田社長は、メーンロビーをエントランスロビーから数段低くすることで、メーンロビーをエントランスから区切ることも提案した。ホテルオークラ東京営業企画部広報課の荒井郁子氏によれば、「ロビーは落ち着く場所とすべきで、商売をしてはいけないという考えもあったと聞いている」と話す。メーンロビーの隣に、谷口が設計したメーンダイニング「オーキッドルーム」があるが、ロビー内に飲食スペースをつくらなかったのは、静けさを守るためだったのかもしれない。
時間をかけて大倉会長の希望をそしゃくしていった谷口。ただ、大倉会長と野田社長がロビーの天井を高くして、真ん中に“夢の架け橋”をかけたいと希望したことに対しては、さすがの谷口も困惑したようだ。「大倉さんは、朱塗りの欄干の付いた太鼓橋をロビーに架けたかった」と小坂が後のインタビューで話している。谷口は「その精神だけを採り入れましょう」という姿勢で、メザニン(中2階のこと。本館でいうと6階)を設け、一部をブリッジ状にした。メザニンにはロビーと同様にソファと漆塗りのテーブルを置き、ロビーを見渡せる贅沢な空間が生まれた。
後編に続く。
<訂正>4ページ目、メーンロビーの写真キャプションおよびメザニンに上る階段の写真キャプションの一部に事実と異なる記述があり、削除しました。(2015年3月13日18時10分)