渋谷区は11月9日、新庁舎と新渋谷公会堂の整備計画案を公表した。現在の庁舎と公会堂がある区の敷地の一部に70年間の定期借地権を設定。三井不動産などが分譲マンションを建てるのと引き換えに、区は新庁舎と新公会堂を無償で建設してもらう。定期借地の権利金を充てて、区の財政負担なしで庁舎などを建て替える全国初の試みだが、ここにきて思わぬ課題に直面している。建築費の高騰だ。
渋谷区が庁舎の耐震強度不足を理由に、民間から事業スキームを含めた建て替え計画の提案を募ったのは2012年12月のこと。区は2013年12月、応募した5グループの中から三井不動産と三井不動産レジデンシャル、日本設計の3社で構成するグループを選定し、日本設計が中心となって基本設計を進めてきた。
三井不動産などによる提案は、敷地の南側に新庁舎、東側に新公会堂、北側に分譲マンションをそれぞれ個別の棟として建設するというものだ。現在の庁舎と公会堂がある敷地1万2418m2のうち、マンションを建てる北側の4565m2を区から借りる。
3棟の総事業費は2013年12月時点で367億円。三井不動産などは定期借地の権利金として区に支払う154億円の代わりに、新庁舎と新公会堂を建設して区に譲り渡す。定期借地期間の終了後、分譲マンションの土地は更地に戻して区に返還する。
渋谷区は、区の財政負担がゼロであるうえ、庁舎の工期が27カ月と5グループの提案の中で最も短いことなどを理由に、三井不動産のグループを選んだ。庁舎と公会堂、マンションをそれぞれ別棟として配置する点も、「将来の環境変化に対して柔軟性が高い」と評価した。