重さ数十キログラムの石材を運んで敷き詰めたり、中腰のまま床に打設したコンクリートをコテで押さえてならしたり――。大林組は10月下旬、こうした重作業を解消するサイボーグ型ロボットを日本で初めて東京都内の建設現場に実戦投入する。

 開発したのは、ロボットスーツ「HAL(Hybrid Assistive Limb、ハル)」の研究や製造、販売を手掛けるサイバーダイン(茨城県つくば市)。筑波大学大学院の山海嘉之教授が社長を務めるベンチャー企業だ。大林組はサイバーダインが新たに開発した「作業支援用HAL(腰補助タイプ)」を導入して、作業員に装着してもらう。

「作業支援用HAL(腰補助タイプ)」の装着時の様子。白い作業服を着た大林組の社員らが記者発表会のモデルを務めた。手前はサイバーダインの山海嘉之社長(写真:ケンプラッツ)
「作業支援用HAL(腰補助タイプ)」の装着時の様子。白い作業服を着た大林組の社員らが記者発表会のモデルを務めた。手前はサイバーダインの山海嘉之社長(写真:ケンプラッツ)

腰への負担を抑えて重い物を持ち上げられる。こちらは開発したサイバーダインの社員がモデルを務めた。骨盤の幅が39cm以下の人であれば装着可能で、「日本人の体格であればほぼ問題なく使える」(山海社長)と言う(写真:ケンプラッツ)
腰への負担を抑えて重い物を持ち上げられる。こちらは開発したサイバーダインの社員がモデルを務めた。骨盤の幅が39cm以下の人であれば装着可能で、「日本人の体格であればほぼ問題なく使える」(山海社長)と言う(写真:ケンプラッツ)

 作業支援用HAL(腰補助タイプ)の仕組みは以下の通り。

 まず、充電池やモーター、制御用コンピューターなどを納めたHAL本体を腰に装着し、本体から延びたベルトを両足の太ももと腰回りにそれぞれ巻いて固定する。背中の皮膚の2カ所には、直径25mmほどのセンサーを貼り付ける。

 次に、作業員が物を持ち上げようとすると、脳から神経を伝って電流が筋肉へと流れる。皮膚の表面にも到達する電流を背中のセンサーで捉え、HALのモーターが駆動。太もも付近を軸に、前かがみになった上半身を引き起こすような力を発生させることで、作業員の負荷を減らす。

 作業員が重い物を持ち上げようとする際は、脳が出す神経信号として強めの電流が流れるため、HALは大きな力を発揮する。逆に、軽い物を持ち上げようとする際は、弱い電流しか流れないので、HALは小さな力しか出さない。さらにHALは人工知能を備え、物を持ち上げる瞬間に駆動力をやや高めるなど、絶妙な制御をする。「単にオンとオフで駆動するのではなく、人の運動意思に応じた最適な力で補助するので、安全で自然な作業が可能になる」と山海社長は説明する。