コンセプトイメージ図(資料:槇総合計画事務所)
コンセプトイメージ図(資料:槇総合計画事務所)

国際子供スポーツセンターを並置した新国立競技場

それではポストオリンピックのこの施設を観客席上部にのみ天蓋のあるもの(無蓋化)とした場合を考えてみると次の様な利点を指摘し得る。

1.無蓋化することにより計画は柔軟性を増し、例えば一部仮設化し、ポストオリンピック施設としてはスポーツ需要に対して適正な5、6万人規模にすることができる。それにより建設費、維持費も一挙に削減し得る。
2.また、現国立競技場施設の改築、神宮アパート保全の可能性も検討のオプションに加え得る。
3.有蓋施設で指摘した、天然芝育成、可動屋根装置への懸念は霧散し、スポーツ関係者の信頼が増大する。
それだけではない。ポストオリンピックにおいて新しい使用目的として、この施設を単に成人用だけでなく広く子供の為のスポーツ施設を併せもつことを提案する。国際子供スポーツセンター(仮称)の根拠地とすることが出來る。

a.先ずJSCの5.29案の施設周縁の広場、特に西南部を中心に図で示すように常時子供のスポーツ広場として開放する。更にその下部も西南部を中心に様々な室内スポーツ施設に充当し、広大なオリンピック時のホスピタリティ空間もオリンピック以後スポーツ空間に転用する。
また、メインスタジアムの一部も適時、子供スポーツへのイベント(例えば子供オリンピック、子供サッカーワールドカップ)等に利用することを目標に掲げる。
b.A案の1年間300日沈黙する土木架構物に対して、周縁も含めて365日賑いのある誰もが親しめる活気のある環境を実現することができる。
c.店舗も世界の子供スポーツ用具販売に焦点を合わせることができる。
d.博物館との相乗効果も期待し得る。
e.スポーツイベントの前後親子で楽しめる施設になり得る。
f.世界やアジアの子供達とスポーツを通じて交流を深める拠点になる。
g.子供の体力増進、少子化高齢化、人口減少の日本において、この施設は間接的に人々を元気付ける施設になり得るし、国の方針にも沿えることになる。
h.ポストオリンピックの施設として子供にも楽しめる施設としては世界の第一号になり得る。
i.この施設はより広く文科省の行政の対象となり得る。
j.単に有識者の意見だけでなく、どのような子供の施設がよいかについて、広く国民の声を吸収していくことも可能である。
k.この施設は外苑東側の絵画館+銀杏並木道が大正の市民から我々への贈り物であったように平成の都民の未来の子供達への贈り物になり得る。

無蓋化によって節約し得た厖大な建設費のごく一部のコストによってこの施設は実現し得る。

JSCが発表した新国立競技場は、日本近代社会史において嘗てない批判をあらゆる階層から浴び、海外の代表的メディア、例えば英国のECONOMISTはこれをCapital crimes(日本語では死刑に相当する犯罪)であると酷評している。
これは最早この新国立競技場は国家レベルの問題として取上げられていることを示している。

従って厖大な建設コスト、維持費を必要とし、ポストオリンピックの施設としての明確な目標がない現実施案の実現を強行し、世界の嘲笑と国民の怒りを招くか、或いはBに提案する日本中の国民、都民の賛同と誇りを充分に獲得し得る案を選ぶか、その岐路に日本は現在たたされている。