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住宅内の安易な素人配線で危うく火事に

2014/08/11

日経ホームビルダー


住宅では建築や電気など異なる工種同士の協力が欠かせない。日経ホームビルダーでは、電気工事店(電工店)が工務店に伝えたい電気工事に関するポイントを、「電工店から一言」として2014年8月号から連載している。ほかの工種への理解を深めることが、工事の手戻りや思わぬトラブルを防ぐはずだ。

 配線のトラブルが分かったきっかけは、レンジフードファンが回らないと住まい手から電力会社に問い合わせが入ったことだった。電力会社から紹介を受けた電工店が、問題のあった住宅に出向いてレンジフードファンを収めたボックスを開けると、中から黒焦げの電線が現れた。

レンジフードファンを収めたボックスの中で、電線同士の接続部が焼けていた。手でねじって接続しただけなので、経年変化で接触不良を起こした(写真:松倉電気商会)

 このトラブルは、大阪府電気工事工業組合(大電工)に所属する電工店が実際に対応したものだ。最悪の場合、火事になった恐れもある。

 大電工で理事を務める松倉電気商会(大阪市東住吉区)代表の松倉靖浩さんは、「誰かは分からないが、電気工事士の資格を持たずに、電線をつなぐだけだからと安易に接続した可能性がある」と、電線の接続部が焼け焦げていた原因を推測する。

 電気工事士法では、屋内配線は基本的に電気工事士の資格を持つ技術者が施工しなければならないと定めている。ところが、「資格を持たない大工や機器を納入した業者が電線を接続することが、実際にはよくある」と松倉さんは指摘する。

 本来、電線同士の接続は円筒状のリングスリーブで圧着するか、差し込み型電線コネクターと呼ぶ器具に電線の端部を挟み込んで接続しなければならない。長期にわたって適切に接触させ続けるためだ。ところが、トラブルの生じたファンでは、電線同士を手でねじってつなげただけの、いわゆる「手より接続」だった。

すぐにはトラブルに至らない

 電線の接続は、間単に処置できるように見えることに加え、不具合があってもすぐにはトラブルに至らない。そこに資格を持たない素人が配線してしまう落とし穴がある。

 手より接続でも、つないだばかりのときは電気が流れて問題が表面化しない。ところが、時間がたつにつれて電線表面の銅が酸化したり電線同士のねじれが緩んだりする。接続部の接触抵抗が大きくなって熱を持つと、出火に至ることもある。

 手より接続のトラブルは、レンジフードファンに限らない。2006年に浴室乾燥暖房機で焼損事故が多発したが、それも手より接続による接触不良が一因だった。工事の一部で、やはり電気工事士の資格を持たない搬入業者が配線していた。

左側の差し込み型電線コネクターによる接続は、上の写真が電線を正しく接続した状態で、電線の端部が奥まできちんと差し込まれている。電線を板状スプリングと導電板の間に挟み込むことで接続する仕組みだ。下の写真は差し込みが不足している状態。右側のリングスリーブによる接続は、上の写真が電線同士をリングスリーブで圧着させた正しい接続の状態。下は電線同士を手でねじっただけの「手より接続」。経年変化で銅線表面が酸化したりねじれが緩んだりして、接触抵抗が高まる恐れがある(写真:松倉電気商会)

 リングスリーブや差し込み型電線コネクターを使っても、電気工事士が施工しないと事故につながる恐れがある。例えばリングスリーブを使うには、専用工具を扱う技能や圧着状況を確認できる知識が必要だ。

 一方の差し込み型電線コネクターは、電線の端部を手で差し込むだけで抜けなくなる仕組みだ。リングスリーブよりも施工しやすいが、電線の差し込みが不足していると、手より接続の緩みと同様に電気がきちんと流れず、事故につながる。

 松倉さんは、「搬入業者が電気工事士の資格を持たない場合もある。簡単そうだからと大工が配線せずに、電気工事士である電工店に施工を任せてほしい」と話している。

森下 慎一 [日経ホームビルダー

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