本来、電線同士の接続は円筒状のリングスリーブで圧着するか、差し込み型電線コネクターと呼ぶ器具に電線の端部を挟み込んで接続しなければならない。長期にわたって適切に接触させ続けるためだ。ところが、トラブルの生じたファンでは、電線同士を手でねじってつなげただけの、いわゆる「手より接続」だった。

すぐにはトラブルに至らない

 電線の接続は、間単に処置できるように見えることに加え、不具合があってもすぐにはトラブルに至らない。そこに資格を持たない素人が配線してしまう落とし穴がある。

 手より接続でも、つないだばかりのときは電気が流れて問題が表面化しない。ところが、時間がたつにつれて電線表面の銅が酸化したり電線同士のねじれが緩んだりする。接続部の接触抵抗が大きくなって熱を持つと、出火に至ることもある。

 手より接続のトラブルは、レンジフードファンに限らない。2006年に浴室乾燥暖房機で焼損事故が多発したが、それも手より接続による接触不良が一因だった。工事の一部で、やはり電気工事士の資格を持たない搬入業者が配線していた。

左側の差し込み型電線コネクターによる接続は、上の写真が電線を正しく接続した状態で、電線の端部が奥まできちんと差し込まれている。電線を板状スプリングと導電板の間に挟み込むことで接続する仕組みだ。下の写真は差し込みが不足している状態。右側のリングスリーブによる接続は、上の写真が電線同士をリングスリーブで圧着させた正しい接続の状態。下は電線同士を手でねじっただけの「手より接続」。経年変化で銅線表面が酸化したりねじれが緩んだりして、接触抵抗が高まる恐れがある(写真:松倉電気商会)
左側の差し込み型電線コネクターによる接続は、上の写真が電線を正しく接続した状態で、電線の端部が奥まできちんと差し込まれている。電線を板状スプリングと導電板の間に挟み込むことで接続する仕組みだ。下の写真は差し込みが不足している状態。右側のリングスリーブによる接続は、上の写真が電線同士をリングスリーブで圧着させた正しい接続の状態。下は電線同士を手でねじっただけの「手より接続」。経年変化で銅線表面が酸化したりねじれが緩んだりして、接触抵抗が高まる恐れがある(写真:松倉電気商会)

 リングスリーブや差し込み型電線コネクターを使っても、電気工事士が施工しないと事故につながる恐れがある。例えばリングスリーブを使うには、専用工具を扱う技能や圧着状況を確認できる知識が必要だ。

 一方の差し込み型電線コネクターは、電線の端部を手で差し込むだけで抜けなくなる仕組みだ。リングスリーブよりも施工しやすいが、電線の差し込みが不足していると、手より接続の緩みと同様に電気がきちんと流れず、事故につながる。

 松倉さんは、「搬入業者が電気工事士の資格を持たない場合もある。簡単そうだからと大工が配線せずに、電気工事士である電工店に施工を任せてほしい」と話している。