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職人不足の深刻化によって建設コストが上昇し、建設工事が前に進まない事態が続出している。しかし、労務費の高騰は、長年にわたって単価が下がり続けた反動でもある。売り手市場の追い風を捉え、多くの専門工事会社が職人の待遇改善に乗り出している。シリーズ最終回は、日経アーキテクチュアと日経コンストラクションが6月24日に発行した書籍「人材危機―建設業から沈む日本」から、「ラストチャンス」とも言える待遇改善の状況をリポートする。

 「これほどの幅で施工単価が上がると、ますます正確な見積もりができなくなる」。首都圏のオフィスビル新築工事を手掛ける大手建設会社の現場所長は頭を抱えた。手元に届いたのは、コンクリート圧送工事会社からの「圧送料金改定の御願い」だ。

関東地方のあるコンクリート圧送工事会社から元請けの建設会社に届いた料金改定の要望書。基本料金や圧送料単価は「建築施工単価」(経済調査会刊)の価格より5割以上高い
関東地方のあるコンクリート圧送工事会社から元請けの建設会社に届いた料金改定の要望書。基本料金や圧送料単価は「建築施工単価」(経済調査会刊)の価格より5割以上高い

 料金表の内訳を見ると、基本料金は7万円で、圧送料金は700円/m3。ちなみに、要望書が届いた時期に建築工事の見積もりに利用されていた「建築施工単価2014年冬号」(経済調査会刊)では基本料金が4万5000円で、圧送料金は450円/m3。これと比べると改定料金はどちらも5割以上高い。

 現場所長は「確かにコンクリート圧送職人は全然足りないので、単価が上がるのは想定内だったが、それにしても値上げ幅が大きい」と困惑の表情だ。