外国人活用は特効薬ではない

 国交省の新方針は、専門工事会社の経営方針に影響を与えている。鉄筋工事会社の小黒組(東京都江東区)の内山聖会長は「国がこれだけ明確な方針を打ち出したからには、我々も本腰を入れて若い社員の雇用や育成に取り組める」と話す。

 国は建設業での外国人労働者の活用を拡大する方針も打ち出したが、内山会長は職人不足解決の決め手にならないとみる。

 「当社もこれまで外国人研修生の育成や教育に取り組んだが、想像以上に時間と経費がかかる。最近は中国やASEAN(東南アジア諸国連合)の職人の労務費が高騰し、人集めも難しくなった。これからは、外注化や外国人労働者への依存度を下げ、若い社員を積極的に雇用して育成したい。それしか、鉄筋工事業として生きる道はない」と力説する。

 その新方針のもと、この3月に約1億円を投じて3階建ての社員寮を新築した。この春に高校を卒業した新入社員向けに31室を用意した。神奈川、千葉、埼玉の各県にも同様の社員寮を建設する。

鉄筋工事会社の小黒組は、この春に高校を卒業した新入社員のために東京・亀戸に社員寮を建設した。今後、神奈川、千葉、埼玉にも同様の社員寮を建設する予定だ(写真:日経アーキテクチュア)
鉄筋工事会社の小黒組は、この春に高校を卒業した新入社員のために東京・亀戸に社員寮を建設した。今後、神奈川、千葉、埼玉にも同様の社員寮を建設する予定だ(写真:日経アーキテクチュア)

 向こう5年間で1000人の職人を正社員として雇用する目標を打ち出したところもある。住宅内装の補修、検査を手掛けるレイオンコンサルティング(東京都中央区)だ。戸建て住宅の建設現場で働く職人を育成するのが主な狙い。大工や左官、内外装の仕上げなど、職種別、技能レベル別に職人を養成する。18歳から35歳までの未経験者を中心に雇用し、同社の研修マニュアルに沿って育成していく方針だ。

住宅内装の補修会社、レイオンコンサルティングは今後5年で1000人の職人を雇用し、同社独自の研修プログラムを経て現場に送り込む(写真:レイオンコンサルティング)
住宅内装の補修会社、レイオンコンサルティングは今後5年で1000人の職人を雇用し、同社独自の研修プログラムを経て現場に送り込む(写真:レイオンコンサルティング)

 バブル経済期の職人の待遇改善は、結局中途半端に終わったが、今回は政府の本気度が違う。社会保険加入を突破口として、動きをどこまで継続できるかがカギになりそうだ。