「血を吐いても社保に入れ」

 東日本大震災で職人不足が一気に深刻化してから、公共工事設計労務単価は上昇に転じた。13年4月には、全国平均で前年度比15.1%増の異例の引き上げ。14年2月にも7.1%増と大幅に引き上げた。鉄筋工や型枠工は2万円/日に近いレベルまで回復した。

鉄筋工や型枠工などRC造に関連する職種では、設計労務単価が2万円/日に近いレベルまで回復している(資料:国土交通省の「公共工事設計労務単価」をもとに日経アーキテクチュアが作成)
鉄筋工や型枠工などRC造に関連する職種では、設計労務単価が2万円/日に近いレベルまで回復している(資料:国土交通省の「公共工事設計労務単価」をもとに日経アーキテクチュアが作成)

 労務費高騰は、職人不足だけが理由ではない。専門工事会社の経営者が、この機会を捉えて職人の待遇改善に本腰を入れ始めたことも影響している。彼らが特に重視するのが社会保険への加入だ。

 専門工事会社の各種団体で構成する建設産業専門団体連合会(建専連)の才賀清二郎会長は「いまどき、社会保険に加入しない企業に、若い人は入ってこない。だから、傘下の経営者には、血を吐いてでも職人を社会保険に加入させなさいと言っている。そのうえで、保険証書を元請けの建設会社に提示し、必要な法定福利費を反映した単価を要望する。適正価格でないと仕事を受けないという強い姿勢が必要だ」と話す。

 専門工事会社が職人の社会保険の加入を急ぐのには、切実な理由がある。未加入の状態を放置すると、国土交通省直轄の工事を受注できなくなるからだ。

 国交省は、国の直轄工事の元請けと一次下請けは社会保険加入企業に限定する方針を打ち出した。これは14年度中に開始する。さらに、17年度からは社会保険に未加入の技能労働者は、国交省直轄の公共事業で入場を認めない方針だ。国交省は、地方自治体などほかの公共工事発注者にも同様の措置を講じるよう要請している。

 3年後には、社会保険未加入の職人は全国の公共工事から閉め出される可能性が高い。