ツケを職人に払わせた
「これまでがひどすぎた」という佐藤会長の言葉は、圧送工事業だけでなく、建設業に携わる職人全体に当てはまる。
上の図は、全産業の男性労働者、建設業の男性労働者、建設業の技能労働者の過去14年間の賃金の推移をまとめたグラフだ。1999年の賃金を100とし、その後の変化を示している。全産業の男性労働者の年間給与は、99年から2012年までの13年間で6%低下し、建設業の男性労働者の年間給与は8%減少した。
これに対して、技能労働者の賃金の目安となる公共工事設計労務単価は、同じ期間に約30%も低下している。デフレ経済が続いたこの時代、元請け建設会社は激烈な安値受注合戦を繰り広げ、そのツケを最前線で働く職人に払わせてしまった。
このような労働環境では職人の引退や転職が広がるのも当然だ。型枠工事会社の全国組織、日本建設大工工事業協会(日建大協)の三野輪賢二会長は「08年のリーマン・ショック前後の3年間で全国の型枠大工が3割も減った。その影響で東日本大震災の前から、職人不足の兆候が首都圏の現場を中心に既に出始めていた」と指摘する。